自分勝手な映画批評
南へ走れ、海の道を! 南へ走れ、海の道を!
1986 日本 107分
監督/和泉聖治
出演/岩城滉一 安田成美 室田日出男 スティーブ・ビラ
職場の先輩でプロボクサーの哲(柳葉敏郎)の部屋で飲んでいた安(小沢仁志)たちは、哲の部屋を後にした帰り道、路上に止まっているベンツにいたずらをするのだが…

弟の無念を晴らす寡黙な男

沖縄を舞台に、ヤクザに弟を殺された男の復讐劇を描いた作品。原作は佐木隆三の小説。

比較的シンプルであるが、復讐劇という血なまぐさいバイオレンスなストーリーを俳優陣の演技と存在感で実に生々しく彩っているのが本作の特徴であろう。

主人公は多勢のヤクザに立ち向かう一匹狼である。シルベスター・スタローンが適役にも思える設定だが、主人公を岩城滉一が演じる事により、単なる骨太なマッチョではなく、独自の味わいを持ったキャラクターに仕上がっているように思う。

アメリカ軍にコネクションを持ち、銃器を巧みに使いこなす主人公の亮は、岩城滉一の持つパーソナリティーを上手く活かしたキャラクターなのではないかと思う。プロフェッショナルな役柄が、付け焼き刃な演技と感じるとしたら、すべてが台無しになってしまうだろう。

オートバイやカーレース等、男性らしい趣味を充実させている岩城のバックグラウンドは、亮というキャラクターに無駄な説明を要せずにリアリティーを与えていると言えるだろう。また、褐色で筋肉質な肉体、長髪に口ひげをたくわえたワイルドな風貌もイメージを助長させている。そんな彼の挑むクライマックスのアクションシーンは、岩城滉一という俳優の極致と言うべき名シーンではないかと思う。

本作はヤクザ映画とも言えるような作品なのではないかと思う。そう思えるのも、錚々たる俳優たちの凄みある演技が、ヤクザ映画ならではの重厚感をもたらしているからである。岩城滉一の演技が映えるのも、名優たちが磐石の体制で、しっかりと脇を固めているからであろう。

迫力と老獪さに年輪を感じさせる室田日出男や長門裕之。力強くも、どこか斜に構えたような峰岸徹。出番は少ないが異質な存在感を示す萩原健一。他にも若き日の柳葉敏郎、小沢仁志等々、大変豪華で個性的な俳優陣が適材適所でそれぞれの持ち味を遺憾なく発揮し、作品を盛り立てる。ヒロインである安田成美の若いながらも肝の座った演技も良い。


>>HOME
>>閉じる





★前田有一の超映画批評★

おすすめ映画情報-シネマメモ