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見損なうと、ちぃっと切ないことになるでぇ! 昭和初期を舞台に、純情ながらもバンカラな青春を送る若者の姿を描いた作品。 原作は鈴木隆の小説。脚本は映画監督としても高名な新藤兼人。ヒロインの道子を演じる浅野順子は、後の大橋巨泉夫人。また、主人公の麒六と因縁のあるタクアンを演じる片岡光雄は、後にマダム路子と結婚し、お笑いコンビ「品川庄司」の品川祐の継父となった人物である。 昭和10年頃の備前岡山。中学生の麒六は、下宿先の娘・道子へに密かな恋心を抱いていた。その悩みを先輩のスッポンに相談する麒六。するとスッポンは軟弱な麒六を見兼ねて、男気を身につけさせる為にケンカの修行を行なわせるのだった。麒六はスッポンに言われたままに、毎日ケンカの修行に励む。ある程度の修行を終えるとスッポンは、次段階として違う組織に入って修行するように麒六に指示した。そこで麒六は、在校している岡山二中の不良組織、OSMS(岡山セカンドミドルスクール)に入団するのだった。 愉快痛快な作品である。そもそも旧制とはいえ、公開当時22歳の高橋英樹が中学生を演じている時点で反則級の愉快さである。その高橋、すでに顔立ちや体つきこそ出来上がっているが、後の大御所の面影はない。 ただ、それこそが本作最大の見どころであるだろう。本作の高橋は、信じられない程にチャーミングなのである。高橋が演じる主人公の麒六は、設定からして純朴な青年ではあるのだが、とぼけた味の高橋の演技によって、輪を掛けて愛くるしい人物として映し出されていると言えるだろう。 但し、舞台を会津若松に移した後半では、様相に少し変化が生じる。その原因は麒六の成長である。比較的短い時間の作品で、しかも大した説明を用いずに成長を実感させる手腕は見事。そして、麒六の成長と時代の動向がシンクロする事により、物語は俄然シリアスへと傾倒して行く。 ラストシーンを見る限り、本作には続きがある。しかし、残念ながら続編は製作されなかった。叶わぬ願いと知ってても、是非とも作品の続きを、麒六の男道の決着を見てみたかったと思う。 扱うテーマ、ストーリーの関係で、必然的に本作には数多くのケンカシーンが盛り込まれている。正直、その有り様は大変えげつない。しかし、モノクロの映像によって、かなり中和されており、その分、ユーモラスな部分が浮き彫りとなっている。その効果を予め狙っていたのかは不明だが、いずれにせよ結果としてモノクロ作品の利点を感じられるのは、非常に興味深い。 |
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★前田有一の超映画批評★ |
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