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その笑顔は効かないわ 成功を夢見る若者の成長を描いた作品。 長年に渡ってトップスターとして君臨するトム・クルーズが偉大な俳優であるのは間違いないのだが、中でも特にブレイク直後の1980年代の存在感は凄まじく、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いであった。と言いたくなるのも、当時の流行がトム・クルーズの出演作からことごとく発信されていたからである。 「トップガン」でフライトジャケットを、「ハスラー2」でビリヤードを、そして本作で派手なバーテンダーのパフォーマンスとカクテルをあっという間に世間に流行らせたトム・クルーズ。もしかすると厳密には、これらの流行はトム・クルーズだけの功績ではないのかも知れない。また、大きな流行を生み出しやすい土壌があった時代だった事も影響しているだろう。だが、それにしても、これだけ立て続けに出演作が世間に大きな影響を与えた俳優は極めて珍しいのではないかと思う。そして何より、そんな状況も当然だと感じる程の、否、それ以上のパワーをトム・クルーズは発していたように思う。 軍を除隊したブライアンは金融界での成功を夢見て様々な企業の面接を受けるのだが、学歴も経験も実績もないので、ことごとく不採用となってしまう。ある日、通りがかったバーの店先で従業員募集の貼り紙を目にしたブライアンは、中に入り働きたいと申し出る。ブライアンは酒の知識はなかったのだが雇われ店長のコグランに気に入られ、その店で働く事となる。但し、金融界での成功を諦めてはいなかった。ブライアンは夜はバーで働きながら日中は大学に通いビジネスを学び始めたのだった。 本作の大きな特長は起承転結がはっきりしている点であるだろう。しかも、それぞれの章のプロットもしっかりしている。なので断然、見やすい作品に仕上がっている。 ただ、その事を踏まえて意地悪く解釈すれば、トム・クルーズのスター性やアイドル性ばかりに目を奪われがちな作品だと言えるのかも知れない。だが、それはトム・クルーズの瑞々しい輝きがあまりにも眩しいのでそうさせるのであって、物語自体、紆余曲折がある若者の物語として見応えを感じさせる。特にベテランバーテンダーとの対比、師弟であり友人でありライバルであるという複雑な関係性での対比は実に上手い構図であると感心させられる。 また、1980年代を感じさせる作品だとも言えるだろう。その訳は拝金主義的な社会がベースになっているからである。それはイヤらしくも感じるのだが、物語のテーマを明確にさせる上で効果的に作用をしていると言えるだろう。 本作のもうひとつの大きな魅力は音楽である。ジョージア・サテライツがカバーした「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」、リトル・リチャードの「トゥティ・フルティ」、プレストン・スミスの「オー、アイ・ラヴ・ユー・ソー」といったノリの良い曲や、ボビー・マクファーリンの「ドント・ウォーリー、ビー・ハッピー」、ビーチボーイズの「ココモ」といったメロウな曲まで新旧混ぜ合わせたバラエティーに富んだ珠玉の楽曲がムード満点に常に物語を盛り上げる。 それらを収めたサントラ盤は本作とは関係なく1枚のアルバムとして優秀であり、確かな聞き応えがある。考えてみれば本作公開当時の時代は、本作に限らず映画のサントラ盤自体が大きな話題となり、流行を築いていた。そんな風潮こそが、まさしく時代だと言えるのだが、そんな文句で片付けて廃れさせてしまうには惜しい風潮だと思う。 |
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