自分勝手な映画批評
銀河鉄道999 銀河鉄道999
1979 日本 129分
監督/りんたろう
声の出演/野沢雅子 池田昌子 肝付兼太
壁に貼られた宇宙海賊キャプテンハーロックの指名手配ポスターを見る星野鉄郎(野沢雅子)。彼は指笛を鳴らし、仲間を集めた。

そんなの歳とってから後悔すればいいさ

原作は松本零士の漫画。当時テレビ放映されていたアニメーション番組の映画化。銀河鉄道999で宇宙を旅する少年と謎の美女を描いた作品。

率直に言って、整合性を疑うような設定や描写もある。その辺りは、あくまでも詰めの甘さであり、非現実的な空想世界の中にも緻密なリアリティーを重んじる現代の感覚に達していない、製作された時代の所為で仕方がないとも取れるのだが、整合性などお構いなしの自由な発想を善しとする、子供向けのアニメーションの範疇を越えていないとも言えるのかも知れない。但し、そんな難点が存在しても、大人の心にも十分に届く作品であるように思う。

未来を描いた本作でキーとなるのは、機械の体である。生身の人間が機械の体になれば、永遠の命を手に入れる事が出来る。主人公の星野鉄郎も機械の体、すなわち永遠の命を求めて銀河鉄道999で旅に出る。永遠の命というのは人類の夢であるだろう。但し本作は、その要素を用いて逆説的に、限りある命の素晴らしさを説いている。

もちろん、命に限りがあるのは、どうにも動かす事が出来ない事実である。だからこそ日々を大切に、いかに人生を充実させ謳歌させるかが、生きて行く上での永遠のテーマだとは思う。だが、限りある命が素晴らしいとまで断言してしまうのは、あまりにも極端であり破滅的であると言えるのではないかと思う。そんな、あえて限りある命の素晴らしさを訴える本作には、散りの美学とでも言うべきか、どこか儚気な雰囲気が漂っている。

時として、マゾヒスティックとさえ思える程のストイックさを持つヒロイックな人格を賛美する本作は、未来を舞台にしていながらも随分とアナログで、ひいては潔い武士道の精神をも感じさせる。そんな気質を持つ登場人物が繰り広げる物語には、少々、自己陶酔的に感じる面もあるのだが、センチメンタルなロマンが満ち溢れている。

永遠の命などと言われても、あまりにも荒唐無稽で実感を得られないのかも知れないが、永遠の命を贅沢で怠惰な生き方に置き換えれば現実的に感じられるのではないかと思う。そういった視点で捉えるならば、登場人物たちの痩せっぽちで痩せ我慢な奮闘振りに、より一層自己投影出来るのではないかと思う。

また、星野鉄郎と彼と旅を共にする美女メーテルとの不思議な関係も本作の重要なポイントである。鉄郎のメーテルに対するマザーコンプレックスと恋心が入り交じったような、ある種、危なげな感情は、女性の偉大さと、ストイックでヒロイックな生き方の影にある寂しさを同時に示しているように思う。

ナレーションはジェットストリームの城達也。監修として市川崑が参加しているのも興味深い。


>>HOME
>>閉じる







★前田有一の超映画批評★

おすすめ映画情報-シネマメモ