自分勝手な映画批評
勝手にしやがれ 勝手にしやがれ
1960 フランス 95分
監督/ジャン=リュック・ゴダール
出演/ジャン=ポール・ベルモンド ジーン・セバーグ
車を盗んだミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)は、パリで貸していた金を返してもらい、パトリシア(ジーン・セバーグ)と一緒にイタリアに行こうと目論んでいた。しかし、その途中で白バイ警官に出会し、尋問されそうになったところ、車の中にあった拳銃で警官を射殺してしまう。

ツイードにシルクの靴下

警官殺しをした男の逃走劇を描いた作品。

本作は、チンケな男の物語だ。後先考えず、その場限りのご都合主義な性格は、若さの表れという範疇を越えているだろう。ただ、そんな男にも一途な想いがある。恋い焦がれ、忘れられない女性。いくら口では悪態をついても、想いを断ち切る事は出来ない。

そんなヒロインのキャラクターが実に良い。チンケな男に嫌気は差しているのだが、その苛立ちは同時に、思いどおりの成果が出ない日常への不満でもある。だから、反社会的だと知りつつも、スリルを求め、男の行動に乗っかってしまう。

本作には、行き場のないフラストレーションを抱えた、綱渡りで破滅的な若者の生きざまが、大胆なタッチでスタイリッシュに描かれている。そして本作は、ヌーヴェルヴァーグを代表する映画として挙げられる作品である。歴史的な名作は、ともすれば、あくまでも歴史的観点からの価値でしかない場合もあるが、その心配は無用であろう。本作の躍動感は、現在でもダイナミックな波として押し寄せてくる。

主役の二人が実に良い。チンケな男をジャン=ポール・ベルモンドは、ちょっとした伊達男に仕立てた。チンピラ風情を逆手にとったカッコ良さは、まさに本作を象徴しているだろう。チェーンスモーク振りは時代を感じさせるが、それも中々の味である。もしかすると、ベルモンドが演じる事により、設定とは違ったキャラクターになったのかも知れない。

逆にヒロイン役のジーン・セバーグは、設定を忠実に守り、その中で設定以上の魅力的なキャラクターを造り上げたのではないかと思う。彼女の容姿・演技は可愛らしさの中にある芯の強さを、より鮮明にしている。

そして、この二人が実にファッショナブルな点も本作の見どころとなる。ベルモンドのソフト帽、ジーン・セバーグのサングラス等、とてもイイ感じだ。


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