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なめたらいかんぜよ! 原作は宮尾登美子の小説。大正・昭和にかけての土佐・高知を舞台に、鬼政(おにまさ)と呼ばれる侠客(きょうかく)・鬼龍院政五郎とその娘・松恵の生きざまを描いた作品。 基本的には男の世界。男が胸を張り、女がそれを支える構図の中、その実情と歪み、そして哀愁が生々しく描かれている。 侠客という設定や作中に二人の主役、しかも親子で主役を分け合う物語は、どこかゴッドファーザーを彷彿とさせる。両作を見比べるのは面白いと思うし、見比べれば、お国柄とも言うべき異なる情緒が感じとれるのではないかと思う。 ゴッドファーザーには、イタリア系気質が根底にあった。そして、その気質とは別なのかも知れないが、物語を突き進めるのはストイックな心情であった。当たり前だが、本作は日本の物語であり、日本人気質が描かれており、そういった観点で考えると、物語の推移も日本的だと言えるのかも知れない。ただ、良しも悪しきも本作に描かれている日本的風情は、今や過去のものとなってしまったようにも思える。 そんな昔ながらの雰囲気を仲代達矢、岩下志麻をはじめとする名優達が貫禄たっぷりに演じる。本作で感じるような重厚感は現在の俳優では味わえないだろう。言い換えれば、本作のような雰囲気を持った作品は、この先、中々お目にかかれないのではないかと思う。 また、センス良く魅せるのではなく、歳月を経て育まれたような、日本家屋の美しさが本作で描かれており、そこからも現代では表現しきれない重みを感じる。 「なめたらいかんぜよ!」の台詞と共に夏目雅子演じる松恵が啖呵を切るシーンは、あまりにも有名。本作は夭折した彼女にとっては代表作のひとつとして挙げられる作品であり、その評価のとおり、ベテラン達の重さとは違うタイプではあるが、肝の据わった迫真の演技を魅せてくれる。余談だが、松恵役は当初は大竹しのぶが予定されていたそうだ。 また、松恵の幼少期を演じた仙道敦子も素晴らしく、後の活躍が容易に想像出来る子役とは思えぬ光る存在感を示している。 |
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