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人との距離がわからない 本作の題材になっているのは「のぞき」。決して誉められる行為ではない。むしろ、とがめられ、罰せられる行為だ。題材が題材なだけに賛否は別れるのかも知れないが、本作はアブノーマルな世界を通じて、繊細で儚く切ない純愛を見事なまでに描き出している。 のぞく男と、のぞかれる女。決して接点とは呼べないレンズ越しの関係を心の拠り所にして生きる男。男は女の人生を追い続ける。「のぞき」は、もはや男の趣味ではない。生きる支えであり証しなのだ。 誰もが人として不完全であろう。そして、誰もが人とは違う個性を持っているのだろう。しかし、多くの人は、そんな自分を理解しつつも、上手く他人と折り合いをつけ、社会に融合して行く。社会と融合する事で、自身に変化も訪れるだろう。それを成長と呼ぶのかも知れない。 しかし男の強い自意識がそれを妨げ、あらゆるものを退ける。男はひとりで生きている。レンズの向こうの女を見つめて。女が、どんな思いで、どんな人生を送っているのかも、大して知らずに。 イカついイメージのある小沢和義だが、失礼な言い方かも知れないが、その持ち前の強面を上手く利用して、不器用でナイーブな男に深みを持たせ、素晴らしく演じている。緒川たまきの不思議な透明感も、のぞかれ続ける女という絶対的な存在に説得力を与えている。その他、脇を固める光石研、江口のりこ、鈴木砂羽、小倉一郎の巧みな演技も実に良い。 過度に情報を提供せず、シーン中の間(ま)、あるいは、しっかりとつなぎ合わせない事で生じる、シーンとシーンの間(あいだ)を上手く用いて、想像力に訴えかける手法は見事。その想像力は、本作の持つアブノーマルな世界と、純粋な世界の両方に作用し、観る者を不思議な空間へと誘って行く。 |
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