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ドタバタスパイが地球を救う 1960年代のアメリカのテレビドラマ「それ行けスマート」のリメイク。コメディ要素たっぷりのスパイ映画。 残念ながら私はオリジナルは未見なのだが、「それ行けスマート」は「007」シリーズのパロディー的な意味合いを持っているらしく、本作にもその姿勢は垣間見られる。そもそも主役のスマートを演じるスティーブ・カレルはどことなくジェームズ・ボンド顔だ。ボンドがウィットに富んだスマートなユーモアなのに対し、スマートのユーモアが名前と真逆でスマートではないのは何とも皮肉だが、それこそパロディーの面白さ、醍醐味だろう。 その他にも「007」を思い起こす節は見受けられる。奇想天外な秘密兵器はもちろん、ダリープ・シンが演じる無口な大男は「私を愛したスパイ」のジョーズを彷佛とさせるし、また、これは深読みかもしれないが、マドンナによるエンディング曲は「ダイ・アナザー・デイ」をイメージさせた。こういった遊び心はニヤリとさせられるし、オリジナルを知っている人はもっと楽しめるのではないかと思う。 しかし、そんな予備知識がなくても十分に楽しめる作品だ。とにかくギャグ満載で愉快。それも主人公スマートが、いたって真面目に、あるいは自らの体裁を保とうとしてカッコつけている上に成り立っているからこその面白さだ。それも、スティーブ・カレルだから為せる技だと思う。このピントのはずれた愛すべきキャラクターは、分かる人には分かると思うが、鳥山明の漫画「Dr.スランプ」の「スッパマン」を連想させた。 アン・ハサウェイ演じるスマートのパートナーでセクシーでアクションもこなすエージェント99はアンジェリーナ・ジョリーが似合いそうな役柄だ。だが、本作の性質を考えると、力強さはあまり感じないのだが、スイートなアン・ハサウェイのしなやかさは本作に良い具合でマッチしており、華のあるヒロインとして魅力を振り捲いている。スマートとの相性も抜群だ。 その他の出演陣も、言い方は悪いが、こういった作風ではあるが、豪華なキャストが揃っている。本作は明らかにコメディなのだが、ストーリーや大規模な特種効果を含んだアクションもしっかりしており、コメディ要素を排しても、それなりにスパイ映画として成立するレベルだと思う。 こういった土壌があるから、コメディが生きるのであろう。そして、こういった妥協を許さない作品に対する真摯な姿勢が、上質なコメディを成立させているのだろう。ドタバタ劇が実にスマートに並べられているセンスが素晴らしい。時の経つのを忘れさせ、楽しませてくれる作品だ。 |
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