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日記に閉じ込められた世界を求めて 原作は雫井脩介の小説。部屋に残されていた前の住人の日記を読んでしまった女子大生の物語。 「誰でも人生でひとつは素晴らしい小説を書く事が出来る。それは自分の人生を書く事だ。」。本作を観て、学生時代の国語の先生が授業の合間にそんな話をしていた事を思い出した。 人の日記を読むなんて悪趣味極まりない。だが、人の人生を、あるいは吐露した心情を見てみたいという興味や欲求はどこかにあるのかもしれない。主人公の香恵は禁断のノートに手を掛ける。「事実は小説よりも奇なり」なんて言葉があるが、まるでその言葉を実体験するように、香恵は日記の主人公に引き付けられて行く。それは、奇しくも小説を読むような趣で。 本作には2つの物語、2人の主人公が存在する。現在の主人公は沢尻エリカ演じる香恵、過去の主人公は竹内結子演じる伊吹。香恵は日記の作者で主人公の伊吹に自身を重ねようとするのだが、それはどこか自分にないものを持っている伊吹への憧れのように感じる。その印象を強めるのも、表現のタイプの違う2人の女優が演じたからのように思える。それはどこか月と太陽の関係性に似ているように私は感じた。 過去と現在を行き来するストーリーはファンタジーの要素も多分に含む。実際、そのように見せようとする意図も大いに感じられる。過去といっても遠い昔ではないのだが、万年筆や木製のサッシ等、随所にノスタルジックな風合いが持ち込まれており、その事もファンタジー色を強める効果をもたらしているのだと思う。だが、満席になっていないマンドリンの演奏会の様子等、妙なリアリティーを持たせているのも面白く思えた。 ノスタルジックに関してもうひとつ言及すれば、伊勢谷友介の存在感が中々ユニークに感じた。彼が演じるイラストレーターのリュウは、実際には履いていないのだが、下駄が似合いそうなキャラクターに感じた。ファッションモデルもこなす彼なので、決して野暮には映らないのだが、いにしえの貧乏芸術家風情を感じさせ、しっかりと本作の雰囲気にはまっている。ファンタジーの住人である黄川田将也のレトロなカッコ良さもイイ具合だ。 |
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