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彷徨える若者が集うゲレンデ ゲレンデを舞台にした、心に傷のある若者達の葛藤を描いた作品。フジテレビ製作という共通点も影響していると思うのだが、私はどうしても私をスキーに連れてってを連想し比較対象にしてしまう。ただ、約20年の時を経た2作品の比較はなかなか興味深い。 両作品ともスキーを題材にしているのだが、そのスキースタイルの変化に注目したい。本作も20年後に観たら同じ感慨に陥るのかもしれないが、私をスキーに連れてってでのトリッキーなスキーアクションは本作と比べて幾分チープに見える。 最近、私はまったくゲレンデに行っていないので実情をしっかり把握していないのだが、用具の進化や1990年代からのスノーボードブームがもたらしたXスポーツを手本とするような派手で過激とも言える滑走スタイルの認知と浸透がウインタースポーツの楽しみ方、あるいはトレンドに大きな影響を与えたのではないかと思う。 加えて、上村愛子・里谷多英らが活躍したモーグルの影響も多分にあると思われる。見栄えの良い競技内容自体、観ていて興奮するのだが、1998年長野冬季オリンピック開催に合わせた上村愛子のCM出演から始まる人気、さらには里谷多英の金メダル獲得はモーグルの知名度を一気に引き上げた。本作で瑛太演じる主人公はモーグルの選手。もしかするとオリンピックでの彼女達の活躍があったからこそ本作が製作されたのかもしれない。 それ以上に重要なのは、この20年での人間心理の変化であろう。未来永劫の繁栄を疑わなかったかもしれないバブル期と比べるのは極端かもしれないが、現代人は未来に対する漠然とした不安を抱えている人も多いのではないかと思う。確かに不景気、年々増加・凶悪化・醜化する犯罪等々、現代は不安要素が多い。しかし、具体的に最悪の事態が必ず訪れるという理由でなく、漠然と未来に不安を感じるのであれば、それは不健全だと言えるだろう。 そんな世相から落とされた影が本作の真のテーマになっている。本作は幸せなラブストーリーでも明朗快活な青春映画でもない。挫折し傷ついた若者達の悩み、もがき苦しむ姿、恐ろしくて中々前に踏み出せない姿が描かれている。この心情にリアリティーをもって共感できるのは、20年という時代の流れなのだと思う。 また、私をスキーに連れてってでは多少いびつに感じた作品全体のバランスも本作はしっかりととれているように感じる。これも20年の歳月で育まれたエンターテインメントの成熟さの表れのようにも思う。 |
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