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大人の知らない子供の世界 小学生の妊娠を描いた作品。原作はさそうあきらの漫画。 恐ろしささえ覚える衝撃作であり、賛否は大いに別れると思う。ストーリーの顛末の評価は別にして、作品自体は良く出来ていると思う。特に大人と子供の意識の違いが浮き彫りになっている点は大変興味深い。 子供を侮ってっはいけない。大人は誰でも子供を経験している。だからといって、すべての子供の気持ちが判る訳ではない。様々な大人がいるように、子供も人それぞれなのだ。そして忘れてはならないのは、子供の行動は必ずしも先を見据えた根拠に基づかないということだ。 子供のコミュニティーは、ある意味、独立国家のように強靱である。理路整然とした分別はないのだが、絶対的な通念があり、コミュニティーを守ろうとする意志は強く、マフィアのような掟もある。チクリを御法度とする封建的なコミュニティーは、大人とは隔離された世界であり、その中での浅い思慮から導き出された総意は、間違った方向に進む危険性を秘める。 しかし綻びも出てくる。それは子供故の弱さなのかもしれないし、間違いを疑問に思う良心なのかもしれない。いずれにせよ、その綻びから大人が介入する余地が生まれる。 しかし、意志を貫き通す頑固者がいたり、しっかりとした統制力を持ち信頼を得ているリーダーがいれば、子供のコミュニティーは繁栄する。敵となる大人がいれば尚更良い。良しも悪しきも仲間意識や団結力を最重要とする子供のコミュニティーは確固としたものとなる。 本作を現実として考えれば、ごく稀なケースなのかもしれない。しかし、妊娠に限ったことではなく、子供達が本作のように危ない方向へ進む可能性はあり得るのではないかと思う。 すべての子供の思考や行動が大人の監視下にあれば、間違いはなくなるのかもしれない。しかし、子供が成長する過程で、親や身近な大人と距離を置く必要性はあるのだと思う。私自身を顧みても思い当たる節はある。それは別段、大人への反抗心ではない。悪事を隠ぺいする為でもない。今まで親や身近な大人に話していたことを、親や身近な大人ではなく、友達に話すようになる。それは新しい信頼関係の構築という意味でも、自分で物事を解決する意味でも大きな意味があり、自立への一歩なのだと思う。 本作は子供の行動を賛美する作品ではないと私は思う。むしろ子供達の思うところの正義に基づいた行動の恐さを描いており、閉鎖的な子供の世界を子供目線で描いた大人への警告なのだと思う。人に教えること、子供を育てることに絶対的な教科書はない。だからこそ難しい。色々と考えさせられる作品だ。 ただ、本作の内容を考えれば、本作を観賞出来る年齢の制限を設けるべきだったと思う。 内容が過激な為に、余談になってしまいそうだが、姉妹役の谷村美月と甘利はるなの容姿が似ているのは良いキャスティングだと思う。 |
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