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あの女を一瞬も忘れなかった 作品タイトルはフランス語で「運命の女」という意味らしい。そう聞けば、必ずしも清らかではないかも知れないが、少なくとも肯定的には受け止めそうなものだ。しかし、観ていれば違った心象を感じる事だろう。本作は裏切りを何とも思わない女を中心に繰り広げられる物語である。だがしかし、作品タイトルの意味に偽りがないのが面白いところである。 カンヌ映画祭にレジス・ヴァルニエ監督と一緒に訪れるモデルのヴェロニカが着ている衣装、ショパールが製作した総額1000万ドル、合計500個、385カラットのダイヤがちりばめられた蛇の形のビスチェを盗もうとする一味がいた。大胆にも映画祭の会場で遂行される計画は順調だったのだが、あと一歩のところでアクシデントが発生する。そのアクシデントに便乗して、一味の女は仲間を裏切り、ひとりでダイヤ・ビスチェを持ち去った。 官能的な描写でスタートする本作。但し、直接的なのはそこまで。だがしかし、常に官能的なムードは支配しており、不穏なミステリーと生々しく呼応し続けている。主人公の女は、かなりの性悪女。性悪女を中心にした物語はそういうものだろう。性悪女とは多分にセクシーなものだ。そして、そんな女に振り回される男もセクシーなのである。 本作は、ちょっと説明不足ぎみに感じる作品であるだろう。それがミステリアスなムードを高める要因のひとつになっている。但し、意味不明な訳ではない。後追いで説明をしてくれるので路頭に迷う事はないだろう。 その事を踏まえつつの物語の展開が本作は素晴らしい。二転三転する物語は既存のミステリーの範疇を超えた見応えをもたらすだろう。 右往左往しながら辿り着いたクライマックスが、これまた秀逸。ポカンと口が広がり、あっけにとられてしまういそうなクライマックスだが、してやられた感の心地良さは格別。「ひと粒で二度おいしい」なんてのは、どこかで聞いたフレーズだが、まさにそれを地で行くような作品である。 音楽は坂本龍一が担当している。 |
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★前田有一の超映画批評★ |
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