自分勝手な映画批評
ホーム・アローン ホーム・アローン
1990 アメリカ 103分
監督/クリス・コロンバス
出演/マコーレー・カルキン ジョー・ペシ ダニエル・スターン
クリスマス休暇をパリで過ごす予定のマカリスター家は、その準備で大騒ぎになっており、警官(ジョー・ペシ)が訪ねて来ていたのだが、誰も相手をしようとはしなかった。

クリスマスの贈り物

家に一人で残された8歳の少年の奮闘を描いた作品。

子供には規制が多い。よって子供は不自由である。好きなテレビ番組は思う存分見られないし、好きな食べ物も好きなだけ食べる事が出来ない。そんな時、ダメだ!ダメだ!と口うるさい親を煩わしく思う事だろう。終いには、居なくなってしまえば良いなんて思ってしまうのかも知れない。でも、本当に居なくなってしまったらどうなるのだろうか?

クリスマス休暇をパリで過ごす予定のマカリスター家とその親戚家族は、出発の前夜に旅行の準備に勤しんでいた。しかしケビンだけはそのペースに合わずに皆の気持ちを逆なでしていた。ケビンには言い分があるのだが聞き入れられずに皆から批難され、ついには屋根裏部屋へと行かされてしまい、ケビンは一人で屋根裏部屋で一夜を過ごす事となった。皆が寝静まった夜中、強風で木が倒れて電線を壊し停電が起こる。その影響で目覚まし時計が鳴らずに皆が寝坊してしまった。しかし慌てて準備をして何とか出発する事が出来た。但し、慌ただしさの中、屋根裏部屋に居たケビンは置き去りにされてしまった。

幼い子供が一人で取り残される状況を考えればバイオレンスでもおかしくないのだが、本作は逆方向へと舵を取り、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさで繰り広げられる極上のコメディーに仕上げられている。子供を主人公とし、子供の視点で描かれた本作は、子供向けの作品だと言えるのかも知れない。しかし、大人でも十二分に堪能出来る作品であるだろう。極上のコメディーであり、大人をも魅了する作品である理由は緻密な計算が裏打ちされているからである。

とにかく良く出来た作品だ。周到にちりばめられた伏線。それをつぶさに回収しながらの展開。それは、まるで精密なメカニズムのように巧妙であり、その機能美だけでも大きな感動を覚える。更にそこに多くのユーモアと少しのペーソスが観る者の心をくすぐるように味付けされているので、もはやひれ伏す他ない状態である。

万人を楽しませる事が容易ではないのは言うまでもない。だが本作は、その奥義を知り尽くしているかのようである。本作の魅力はハリウッド作品の魅力そのものだと言い換える事が出来るだろう。制作費を存分に使ったスケールの大きい作品もハリウッド作品ならではだとは思うのだが、人を楽しませる事への深い探究と、その実現力こそが他の国の作品では簡単に真似の出来ないハリウッド作品の凄さなのではないかと思う。そのスピリッツが本作には凝縮されている。

本作の素晴らしさは万全で細心な設定・ストーリー・演出で決定的ではあるのだが、そこに主人公の少年ケビンを演じるマコーレー・カルキンの魅力が加わり、より一層増大している。本作で魅せるカルキンの演技は秀逸。可愛らしさはもちろんなのだが、ほぼ一人で物語を進行させなければならない大役を見事に果たしている姿は、幼いながらも実に立派であり感心させられる。

公開時に大ヒットした本作。その輝きは何年経っても失われていない。


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