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勲章は貰うより着けるのが難しい 過去に因縁がある男二人が事件を追う姿を描いた作品。 男のプライドなんていう概念は、もはや過去の遺物なのかも知れない。もっとも、そうなってしまったのは、その概念を都合良く利用し、その概念に甘えていた男の責任なのかも知れない。ただ、その概念が廃れてしまった事で、去勢されてしまったような男が増えてしまったような気もする。 プレシディオ基地内で女性憲兵が何者かに殺された。犯人は車で逃走し、基地を出てサンフランシスコの街へ。街中では市警察のパトカーに追われるのだが、犯人はパトカーに乗っていた警官も殺して逃げ延びてしまう。二つの事件は同一犯の犯行。だが、基地内の事件は軍、街中での事件は市警察と管轄が異なる。事件の軍の担当者はコールドウェル中佐、市警察の担当はオースティン刑事。実は以前、オースティンは軍に所属しておりコールドウェルの部下であった。しかし、ある事件をきっかけに軍を辞め、それ以来二人には確執があった。 コールドウェルとオースティンは同じ種類の人間だと言えるだろう。良く言えばブレずに、悪く言えば意固地に自分の信念を貫くタイプ。そんな二人は他人と協調する事が不得意。特に確執のある二人なので、なおさら協調は難しい。しかし、目の前の事件を解決する為には協力しあわなければならない。 もちろん、そんな事は互いに百も承知である。だから、決して良い気はせず、反目しながらも任務を遂行する。任された仕事は、個人的な事情はさておき、自分の使命感・責任感においてきっちりとこなす。それこそ男のプライドであるだろう。世の中の為に働く職業に就いているのならば尚更である。知ってか知らずか、世の為、人の為とは名ばかりで、自己顕示ばかりの者とは違うのである。 堅物な男同士の無骨な関係が本作の見どころではあるのだが、謎解きミステリー形式のストーリー自体も実に良く出来ている。しかも、このミステリーも男のプライドが深く関わっている。緻密に計算されたミステリーで、なおかつ、しっかりと作品のテーマを活かしたストーリー構成は極めて優秀だと感じる。 本作にはキャスティングの妙も強く感じる。頑固一徹な気高さを感じさせるコールドウェルのキャラクターにショーン・コネリーが良く似合う。但し、コネリーだけでは本作の世界は描ききれなかったであろう。オースティンを演じるマーク・ハーモンの功績は大きい。 ハーモンがマイルドにも感じる風貌で、荒削りなリトル・コールドウェルとでも言うようなキャラクターであるオースティンを確実に演じた事で本作が成立している。血の繋がりはないのだが、親子のように思える二人の関係は、いつのまにか微笑ましくも見えてくる。 コールドウェルの娘を演じるラブコメの女王に就任する直前のメグ・ライアンの少しはすっぱな演技も見ものだ。 本作は決して派手ではなく、どちらかといえば地味な部類の作品だと言えるのかも知れない。だが、絶滅危惧的な男らしさが味わい深く詰まっている。コールドウェルは言う「別に誰からの感謝も欲しくない、そんな事は重要じゃない」。いぶし銀に輝く、中々の秀作ではないかと思う。 |
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