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黒い天使たち 自分を育ててくれた孤児院を助けるべく奮闘する兄弟を、音楽をふんだんに交えながら描いた作品。 とにかく楽しい作品だ。ただ、基本にあるのはハードボイルドである。現在の自分を顧みず、世話になった孤児院の為に奔走するブルース・ブラザース。仁義を貫き、何が何でも恩義に報いる姿は、ハードボイルド以外の何ものでもない。 だが、それ以外はコメディーである。先立つものがなく、行き当たりばったりの精神に基づいて遂行される物語は、とにかく滅茶苦茶だ。しかし、基本にはハードボイルドがある。だからこそ、余計に面白おかしく感じるのだろう。 そして何より、ブルース・ブラザースがカッコイイ。もしかすると、彼らをカッコイイと称する事は、万人からの共感は得られないのかも知れない。正義の味方や完全無欠のヒーロー、あるいは、爽やかな好青年を求めている人達には理解に苦しむのかも知れない。 えらく破滅的で、だらしなくも感じる彼らではあるが、彼らなりのこだわりに基づいた粋な振る舞いや生き方は魅力的である。決して真似をして良いものではないだろうが、黒装束の無表情から滲み出る、場合によっては下品とも思える遊び心やユーモアを踏まえたカッコ良さは、誰もが簡単には真似出来ない個性として輝いている。 多数の楽曲が挿入され、ミュージカルともとれる作風である本作の根底にあるのは、黒人音楽に対するリスペクトであろう。今日のポピュラーミュージックにおいて、黒人音楽がかなりの比重で礎になっているのは周知の事実である。ロックンロールのルーツは黒人音楽。エルビス・プレスリーもビートルズも、原点は黒人音楽である。 だが、ロックンロール草創期の1950年代、あるいは1960年代ならまだしも、ロックンロールが発展も変貌も遂げているのに、わざわざルーツミュージックを持ち出すのは、少々時代錯誤のようにも感じる。 しかし、温故知新と言うべきか、原点回帰と言うべきか、ルーツの良さを改めて教えてくれるのが本作であろう。もちろん、そのルーツが優れているから成し得るのであり、と同時に、ルーツを辿ったからといって、懐古趣味やナツメロにならないのは、ブルース・ブラザースの持つセンスも大いに貢献しているだろう。 本作の見どころのひとつとして、ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ、キャブ・キャロウェイといった黒人音楽の巨人たちのパフォーマンスが挙げられる。 彼らのコンサート等で魅せるライブでリアルなパフォーマンスは、もちろん素晴らしいのだが、本作のような演出がかったパフォーマンスも実に素晴らしい。その事を味わえるだけでも実に贅沢であり、また、彼らがパフォーマンスを引っさげて出演しているという事は、彼らが本作の趣旨に賛同してる事を意味しているのではないかと思う。 |
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