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時を経て訪れた、無邪気な行動の報い 子供時代の因縁から罠に掛けられた男を描いたサスペンス。 「忘れられない思い」なんて聞けば、甘酸っぱくも肯定的な記憶を連想しなくもないが、必ずしもそうとは限らない。忘れられない痛みや苦しみなんていうのもあるだろう。 そんな思いをもたらした人物に対して、「いつかは見返してやろう」といった思いが芽生えるのかも知れない。それが、前向きなパワーとして、生きる原動力になれば良いのだが、抑えきれない絶大なる憎しみとなり、復讐心となるのならば、非人道的な恐ろしい方向へ進む可能性もあるのだろう。 危害を加えた方は覚えていない、あるいは、それほど気にしていない。だが、危害を受けた方は、いつまでも覚えている。悲しいが、このような意識と認識の相違は起こりうる。 未成熟な子供時代に与えた危害が、大人になって何倍も大きくなって返される。ただ、何倍も大きくなったと感じるのは、当時の加害者の感覚であり、分別ある大人としての感覚だろう。だが、当時の被害者にとっては、その感覚は無意味なのかも知れない。復讐を成し遂げたところで、被った痛みや苦しみが解消される訳ではなく、狂わされて失った人生が取り戻せないのならば、尚更である。 単に視覚で恐怖を煽るのではなく、一般社会に潜む人生の狂気を実感させる描き方はサスペンスとして良質。クローヴィス・コルニヤック演じる犯人の用意周到、頭脳明晰なキャラクターは、変な言い方だが、それこそ、スマートな詐欺師や泥棒にも成り得そうではあるのだが、その能力を全て卑劣な犯罪に注ぎ込む姿は、底知れぬ怨念の恐怖を覚える。主人公演じるイヴァン・アタルの悩める演技も良い。後のボンドガール、オルガ・キュリレンコの贅沢な使い方にも注目。 |
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