自分勝手な映画批評
人のセックスを笑うな 人のセックスを笑うな
2008 日本 137分
監督/井口奈己
出演/松山ケンイチ 永作博美 蒼井優 忍成修吾
みるめ(松山ケンイチ)達3人は朝方、終電に乗り遅れ歩いていた不思議な女性(永作博美)を自分達の車に乗せ、送り届けた。後日、みるめ達は自分達が通う学校で、その女性と再会する。

年上女性は天使?悪魔?

原作は山崎ナオコーラの小説。年齢の離れた男女の恋愛を描いた作品。

思春期に年上の異性に対して憧れる感情に共感出来る、もしくは経験した事がある人はいるのではないかと思う。そこには、単に相手への愛情だけでなく、また、年上に対する安心感だけでもなく、自分が経験していない、大人の世界への興味が含まれているのではないかと思う。

本作で憧れの対象となるユリを演じるのは永作博美。まさに適役と言って良いだろう。彼女の大きな特徴は童顔だ。反則とも思える程羨ましいその特徴は、いくつになっても彼女を若々しく可愛らしく見せる。

ただし、彼女はそれだけでは終わらない。可愛らしい童顔とは裏腹なサバサバしたキャラクターが魅力であり、そのギャップの化学反応は彼女独特の色気をも生み出した。幼さを残した外見と年相応の内面を持つ彼女は、大人と子供の掛け橋としては、うってつけではないかと思うし、男を惹き付ける理由となる、女性としての魅力も十分感じられるのではないかと思う。

そんな彼女に魅せられるのが松山ケンイチ。彼の木訥さは真直ぐな青年像によく似合う。彼が演じる事で、単なる思春期の感情ではなく、無垢な純愛要素が強くなったように感じる。

脇を固める健気で内弁慶ぎみな蒼井優の可愛らしさ、忍成修吾のスマートな優しさも実に良い。この二人がしっかりと演じ、キャラクターがしっかりと描かれているので、物語の世界が広がる。

松山ケンイチ演じる主人公みるめは上の世代の女性へ恋心を抱いているものの、自分が属しているのは、あくまでも同世代というコミュニティ。その仲間の関係性ともどかしい心情がよく描かれている。同方向に連結した愛情の矢印、片思いの連鎖は切なくはあるのだが、青春の甘酸っぱさが詰まっているようで何だか微笑ましい。

過激ともとれる作品タイトルだが、内容はそこまで及ばない。だが、決して的外れではなく、あえて言い換えるなら「どんな恋愛をしようと俺の勝手だ」といった感じだろうか。そう考えると、言葉使いのセンスを感じる良い作品タイトルだと思う。

そんな作品タイトルからは想像しづらい、全体的にナチュラルにまとめられた演技と演出は、ひだまりのように心地よい。


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