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痛快に駆け抜ける幕末の軽業師 江戸時代の末期の品川の旅籠での人間模様を描いた作品。 まず気になるのは、タイトルに用いられている「太陽」の文字。時代や日活作品という事を考えると、おそらく石原慎太郎の小説「太陽の季節」から発した「太陽族」から来ているのだろう。 実際、本作には石原裕次郎も出演してはいるのだが、内容的には「太陽族」とは関係あるようには思えない。しかし、時代劇としては型破りな作風、すなわち、既存の概念からの逸脱という意味では共通点があり、上手く的を得た良いタイトルだと感じる。そもそも岡田真澄をちょんまげ姿にさせる事自体が本作の姿勢を象徴しているように思える。 私の見る目の無さが大いに関係してはいるのだが、正直に申し上げると、古い作品の中には、例え名作と呼ばれる作品であっても、鑑賞に厳しいと感じる作品が私にはある。未熟者の私には、現代の感覚との隔たりを、どうしても感じてしまい、馴染めないのが要因ではないかと思う。 しかし、本作は違う。実に面白い。テンポの良い、軽妙で軽快なセンスは現代の感覚でも十分に楽しめるのではないかと思う。もっと言えば、このセンスは、年月を重ね成熟されている筈の現代のエンターテインメント作品と比べても、抜きん出るレベルではないかと思う。 本作は落語をベースにしているらしい。私は、その辺りがてんで無知なので、よく分からないのだが、本作の言葉数の多さ、そこから生まれるテンポの良さは、落語に通じているかも知れない。 その言葉数に比例するかのごとく登場人物も非常に多く、なおかつ、俳優陣は大変豪華だ。皆、それぞれ持ち味を発揮し、隙間なく埋められたストーリーの中、見せ場が絞りきれない程、見どころが多い。 そんな中、やはり要となるのは本作の主人公、居残り佐平次を演じるフランキー堺だ。これぞ喜劇役者という演技は素晴らしく、彼が本作の雰囲気を牽引し、まんまとペースにはめられて行く。ずる賢い程頭の回る、世渡り上手で軽薄なキャラクターではあるのだが、決して嫌なヤツではなく、軽やかな身のこなしは実に粋であり、人情や哀愁も感じさせる。 また、高杉晋作をはじめとする幕末の重要人物や、史実を物語に絡ませている点も作品に面白味を与えていると言えるだろう。 本作はキネマ旬報の創刊80周年記念に集計した「日本映画オールタイムベストテン」で第5位、同じく90周年の集計では第4位にランキングされている作品である。それを鵜呑みにする訳ではないのだが、その評価も納得出来る傑作ではないかと思う。 |
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