自分勝手な映画批評
ヘブンズ・ドア ヘブンズ・ドア
2009 日本 106分
監督/マイケル・アリアス
出演/長瀬智也 福田麻由子 三浦友和
自動車の修理工として働く勝人(長瀬智也)は、いきなり工場を解雇される。帰り際に給料明細と健康診断の結果を渡され、病院で再検査を受けると脳幹部に大きな腫瘍が見つかり、永くは生きられない、もって一週間、あるいは三日、今すぐ命を失ってもおかしくない状況だと宣告される。

懲役? それ俺に関係あるの?

死を目前に迎えた若き男と少女が繰り広げるロードムービー。ドイツ映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」のリメイク。

同じ境遇の二人が偶然に知り合い、偶然を重ねながら、いつのまにかボニー&クライドとなる。そして、更なる偶然を引き起こしながら、最後の目的を果たそうとする。

偶然が多すぎて、都合が良すぎてリアリティーを感じないのかもしれない。しかし、無責任で不謹慎な想像だが、限りを知った者にとって残された時間は、偶然とか必然とか、そんな事など関係ない次元で進んでいるのかも知れない。そんなのリアリティー欠如の言い訳にはならないだろう。しかし、ショックで浮遊しているような精神状態を摩訶不思議な偶然の連続で表現していると言って良いのではないかと思う。

本作は、あくまでも最期の僅かな時間を描いており、登場人物の背景が深く掘り下げられている訳ではないので、絶対的な深みはない。しかし、それは振り返る距離の少ない若者に訪れた、しかも瞬時に訪れた悲劇である事を意味する。いきなり死を宣告されたら? 考える猶予もないまま不思議な速度で時は流れる。

悲劇へ向かう男と少女の設定は、レオンを思い起こさせるのかもしれない。しかし、あまりにも短い時間で、しかもゴールが決まっているので、必ずしも魅力的だとは言い難い。しかし絶対的な絆で結ばれる。それは死であり、言い換えれば命である。

マイルドなスター性と無骨な男臭さを兼ね備える長瀬智也は、特に若い世代では珍しい存在なのではないかと思う。時代や環境が違えば、萩原健一や松田優作のようなポジションの俳優になっていたのではないかとさえ私は思う。

そんな彼とタッグを組むのが福田麻由子。もう子役と呼ばれる年齢ではないのかも知れないが、まだまだ未完成で初々しく感じられる演技が本作に良い作用をもたらしているように思う。

アンバランスな二人の関係が切なくも微笑ましい。


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