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現実と非現実が巧妙に交わる快作 原作は、F・スコット・フィッツジェラルドの小説。老人の体で産まれ、年齢を重ねるごとに肉体が若くなる、奇妙な男の人生を描いた作品。 アンチエイジングは、ある年齢以上の人にとっては大きなテーマであろう。見た目の若さもだが、年老いて、頭や体が思うように機能しなくなるのを歓迎する人はいないのではないかと思う 私は食事の際に、好きなモノは先に食べずに後に残す。殊更、そんな性格の私にとって、年齢が進めば進む程若くなるなんて、楽しみが人生の後半に残っているようで、本作を観賞する前には羨ましく思ったのだが、中々、そう甘くは行かないようだ。年を取ると子供に返るなんて言うが、その辺りが、本作のアイデアになっているのだろう。 本作は、単なる甘く切ないラブストーリーではない。恋愛部分が大きな軸になっているのは確かだが、数奇な男の人生をしっかりと描いた大河ドラマであり、3時間近い長丁場だが、大変見応えがある。 しばらくは別段、若いながらも老人である事を強く意識せずとも、物語は成立し進行して行く。時代も関係してくるのだが、そこに輪を掛けたような男っぷりの良い波乱万丈な生き方に、知らずと引き付けられて行く。とある男の冒険物語と言っても良いのかも知れない。しかし、動乱が治まった後、彼の特異性が悲しくも浮き彫りになってくる。 私はもちろん、ブラッド・ピット演じるベンジャミン・バトンのような人生を送ってはいないのだが、もし彼のような立場だったらどうするのだろうか? そして、ケイト・ブランシェット演じるデイジーの立場なら、どうするのだろうか? 馬鹿な想像なのかも知れないが、本作を観終わった後、感傷に浸りながらもそんな思いが駆け巡った。想像の範疇を越えた愛のカタチではないのかも知れない。しかし自身に重ねてみると、やはり考えさせられる。 宣伝・広告されていた、若返りの人生という作品の要となる設定が、観賞する前から分かっていてもなお、観る者を魅了する技量は流石。また、スケールの大きさ故、忘れがちになりそうだが、特種効果の功績も決して疎かにしてはならない。この素晴らしい技術力があってこそ本作は成立している。 |
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