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ザッツ・オール… 原作はローレン・ワイズバーガーの小説。ファッション誌の編集部を舞台に、傲慢なカリスマ女性編集長のプライドと、彼女の下で働く新人女性編集者の奮闘を描いた作品。ブランド名を上手く用いた作品タイトルに優れたセンスを感じる。内容自体も、そのタイトルからの想像を覆さないスタイリッシュな作品に仕上がっている。 もちろん、最先端のモードを扱うファッション誌が舞台なのだから、スタイリッシュな雰囲気は必須。その雰囲気は豪華絢爛な高級ブランド、登場人物の服装はもとより、オフィス、会話、はたまた街並みから十分伝わってくる。だが、それだけに頼るのではなく作品自体の演出・構成が実にスマートにまとめあげられている点を大いに評価したい。世が1950・60年代だったらオードリー・ヘップバーン主演で製作されていたであろう。そういった雰囲気を持つ作品だと私は感じた。 その印象をさらに強めるのが、実質的な主演であるアン・ハサウェイの存在だ。彼女はスタイリッシュな本作の中で実に良く映える。彼女が演じる可憐なヒロイン像は、決して真似では無く同じでも無いのだが、オードリーの映画のヒロインを彷佛とさせるようであり、アン・ハサウェイはオードリーに負けないくらいチャーミングに輝いている。 そんな彼女が洗練されて行く姿は、サクセスストーリーとシンデレラストーリーを同時に味わえるようで大変贅沢だ。ただ、それだけでは終わらないのが本作の肝であり、存在意義でもある。また、アン・ハサウェイが際立つのも、メリル・ストリープの貫禄があってからこそである。 メリル・ストリープ演じるミランダの人物像は多少大袈裟に思えるかもしれないが、嫌な上司を持った事がある人ならそれなりに思い当たる節があるのではないかと思う。あるいは、職場の誰かを思い浮かべる人もいるのかもしれない。 ただ、一概には言えないだろうが、新しいモノを造り出すには無理難題をクリアしなければならないのかもしれない。そして、常に最新を提供しなければならないトップ・ファッション誌には喧騒がつきものなのかもしれない。そんな世界で頂点に君臨する者の苦労は、受け入れられる・られないは別にして、大いにあるのだと思うし、それを切なくも感じてしまう。 それにしても、そんな上司の下で働くのは大変だ。ただただ忍耐強く、辛抱強く。だが、自分の目標がしっかりと定まっているのなら、あるいは、目標地点からの逆算ができるのならば、その辛さも耐えられる、和らげるのかもしれない。しかし、自分にとって何が本当に大切なのかを忘れてはいけない。新たなステップに挑む心持ちは素晴らしいが、自分自身を見失わない事も大切なのだと思う。 シンプルなストーリー展開だが、軽妙なテンポと華やかさで高揚感を与え、観る者を飽きさせないのは流石。その上、装飾だけではない、しっかりとしたメッセージを持っている作品だ。 |
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