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日本人豪華キャストが大挙した逆黒船 破天荒なニューヨーク市警の刑事と真面目な日本の刑事との反目し合いながらの共同捜査と友情を描いた作品。 本作は言わずも知れた松田優作の遺作。彼が演じる佐藤という役は設定だけで言えばありふれた仇役と言えよう。別段、その設定だけでも本作は成立したと思うのだが、彼は設定以上の人物像に造り上げた。それは本作のクオリティーに大きな影響を及ぼしたのではないかと思う。 それ程セリフが多くはない役柄なのだが、松田優作は身を持って狂人佐藤に魂を吹き込んだ。そもそも彼は日本のエンターテイメントのサイズでは収まりきらなかったのだろう。カゴから放たれて翼を目一杯拡げられるフィールドでの伸びやかな演技は圧巻だ。だからこそ早過ぎる死が何とも惜しまれる。 しかし本作は松田優作だけではない。優作よりも出番の多く本作の核となる高倉健も実に素晴らしい。松田優作が本作に衝撃をもたらすのならば、高倉健は本作に安定感を与えているのではないだろうか。何より彼は海を越えても紛れもなく高倉健である。その揺るぎない存在感には感服である。そんな彼のソウルフルなシャウトもちょっとした見どころだ。 本作の設定を考えると粗悪な作品になる可能性も十分に秘めていたと思う。多くの日本人が、おかしな日本を描いた海外作品に苦笑い、あるいは憤慨した経験があると思う。本作にもそれに似た描写がない訳ではない。しかし、その感情を思いとどませるのは、日本で言うところのビッグネームと呼ばれる俳優を多く配している点だと思う。ハリウッド映画での日本人俳優の力試しに見えるきらいもあるのだが、その力試しは大いに成果を挙げているのだと思う。日本人にとって日本人実力派俳優達の演技は作品に安心感を与えているのだと思う。 それと、もうひとつ、本作はアメリカ側からの一方的な視点で必ずしも描かれてはいない点も注目したい。前述のとおり、おかしいと思う節も確かにある。さらには日本人を小バカにするような描写も見られるのだが、それはそれで遠い異国に住むアメリカ人の視点としてリアルなのかもしれない。しかし本作は一方で日本人のアメリカに対する意識もしっかりと描いている。それが日本人の総意かどうかは別にしても、ある日本人にとっては実際に持っているであろう意見だと思う。そもそも本作のタイトルが「ブラック・レイン」である時点で制作者の意識を感じ取れるのかも知れない。 どうしても日本に関する記述ばかりになってしまうのだが、一介の刑事の執念を描いたストーリー自体大変見応えがある。主人公のアウトロー刑事を演じるマイケル・ダグラスのタフネス振りも非常に良い。 本作とは何ら関係のない余談なのだが、高倉健とジェームス・ディーンは同じ年の生まれ。ハリウッド映画に出演している高倉健を見て、もしジェームス・ディーンが生きていたならどんな俳優になっていただろう?などとふと思ったりした。 |
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