自分勝手な映画批評
フル・モンティ フル・モンティ
1997 イギリス 91分
監督/ピーター・カッタネオ
出演/ロバート・カーライル マーク・アディ トム・ウィルキンソン
以前、イングランド北部の都市シェフィールドは鉄鋼の街として栄えていた。しかし25年後の現在、失業中のガズ(ロバート・カーライル)たちは鉄工所に鉄骨を盗みに入っていた。

悲哀を吹き飛ばすコメディー

職を失った男たちが男性ストリッパーとして生計を立てようという話。ベースにあるのは不況という負のスパイラルが生み出す悲哀。しかしコメディーと感じてしまうのは、主人公たちのバイタリティーが悲哀を上回っているからであろう。

バイタリティーの源は彼らのキャラクターだ。彼ら、特に主人公のガズはまるで小・中学生の悪ガキそのもの。そして彼が率いる仲間たちは悪ガキの集団のようであり、少年探偵団でも結成した方が似合うのではないかと思うくらいだ。ただ、彼らの悪事が、度を越えている節もあるが、いたずらとも思える幼稚なものなので微笑ましく思えてしまう。おそらく大人に成りたくない、子供でいたいという訳ではないのだと思う。成長出来ていないとは言えるが、パーソナリティーが根っから子供然としているのだと思う。

だが、彼らは現実として大人である。しかし彼らが職を求め、金銭を求めるのは大人としての世間体やプライドではないのだと思う。例えば主人公のガズなら愛する子供の為。これは大人・子供関係ない感情である筈だ。彼らの振る舞いや行動は、カタチばかりの大人の尺度で計れば子供っぽく映るのかもしれない。確かに大人の水準を満たしていない点は多々ある。しかし悪い面ばかりではない。カタチばかりの尺度でしか判断できない大人たちには判らない、多くの人がかつて持っていた童心がこそがバイタリティーの原動力なのである。

功罪を合わせ持つバイタリティー溢れる童心と不況がもたらす大人としての現実。この入り込ませ加減が絶妙であり、単なる馬鹿げたコメディーになっていない。そしてもうひとつ、印象は薄れてしまったかもしれないが、お金を稼ぐ厳しさもしっかりと伝えている。

私は本作を大人版のトム・ソーヤーの冒険のような印象を持った。愛すべき作品だ。


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★前田有一の超映画批評★

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