自分勝手な映画批評
ブタがいた教室 ブタがいた教室
2008 日本 109分
監督/前田哲
出演/妻夫木聡 原田美枝子 大杉漣
4月。小学校教諭の星(妻夫木聡)は担任を務める6年2組の教室にブタをつれてきた。星は「ブタを皆で育てて最後に食べよう」と生徒に提案する。

命を学ぶということ…

食用目的で小学生がブタを飼育する実話をモデルとした作品。当時、実際の模様がテレビ番組でとりあげられており、私も見た記憶がある。

賛否が大いに別れる問題作ではないかと思う。私自身も色々な思いが交錯する。嫌なことに目をつぶるのではなく、現実を直視することは大切である。その恩恵に賜っているのならば尚更である。その点では、色々と配慮しなければいけない点も多いだろうが、この経験は有意義なのだと思う。

人が生きるために食することは、何かの命を犠牲にしている。その事実は、おそらくほぼすべての人が認識しているのだと思う。しかし、わかってはいるのだが、どこかその事実をないがしろにしているのではないだろうか? おそらく多くの人は命を奪う瞬間を目の当たりにしていないのではないかと思う。目の当たりにしたのならば、食することを拒否する人もいるのではないかと思う。

事実から目を背ければ、それほど問題はないのかもしれない。しかし、現実を目の当たりにしてしまったら考え込んでしまうことになるのかもしれない。

しかし食さなければ生きていけない。残酷な事実をしっかりと認識し、命の尊さを感じ、感謝して食する。あくまでも人間世界での言い分であり、都合が良い言い訳でしかないのだが、食する者にとって、そういった念が食べ物に対して、奪った命に対しての考え得る最良の思いではないかと思う。

私の想像でしかないのだが、本作の星先生も生徒たちにそういった思いを伝えたかったのではないかと思う。しかし事態はそうは進まなかった。あくまでも本作を映画作品として捉えて言いたいのだが、本作の子供たちは数年後、今回の出来事、そして結果をどう考えるのだろうかと思う。

ただ、ひとこと言わせてもらえば、自主性を尊重するのは素晴らしいと思うのだが、子供の思考範囲は狭い。そこでの正当性はあまりにも恐い。より良い答えを導かせるのは大人の役目であり、教師の仕事なのではないかと思う。

描かれている内容自体の評価は別にして、作品自体の完成度は高いと思う。1年間を2時間弱でまとめたため、1シーンは短く矢継ぎ早ではあるが、違和感は感じない。本当の主役とも言える子供たちの演技も素晴らしい。


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