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従来の邦画とは一線を画した映像スタイル ホテルビーナスに集う訳ありで迷える人間たちの群像劇。ほんの少しだけ英語も入るがほぼ全編韓国語。日本語の台詞は一切なく、日本語の字幕スーパーが入る。 韓国語作品ということもあり、本作は草なぎ剛ありきの作品だと言えよう。監督のタカハタ秀太はテレビ番組「ASAYAN」「チョナン・カン」「SmaSTATION!!」等を手掛けた人物である。本来、映画の世界の人間でない彼が監督だからか、従来の邦画とは違ったテイストの作品に仕上がっている。 本作の大きな特徴は外国語の台詞、それに伴う字幕スーパーの挿入である。外国語の台詞・字幕スーパーによってもたらされる効果は、安直に言えばカッコイイ・スタイリッシュな効果だ。しかし本作は、単に上辺だけのカッコ良さではなく、もう一歩踏み込んで読ませることを目的にしているように感じるのである。 字幕スーパーに記された台詞の数々は、相対的に詩的であり哲学的だ。そこには、読むことが必然であるならば、その行為に意味があるような文章を読ませようという意図が感じられる。それはナレーションの多用にも現れているようにも思う。劇中の登場人物の発する会話主体の台詞だけでは読ませることに重きを置けなかったであろう。詩的・哲学的な表現は、心情を吐露するナレーションに適していると言えるだろう。 本作のもうひとつの特徴は極限まで色を排した映像である。色のない映像は、ストーリーと呼応して静けさと虚無感を、外国語の台詞・字幕スーパーと呼応して無国籍な世界観を演出している。 私の知る限りのタカハタ秀太が手掛けたテレビ番組は、テロップとナレーションを効果的に使ったポップでキャッチーなスタイリッシュな映像という印象がある。面白く感じたのは、テロップ(字幕スーパー)・ナレーション・スタイリッシュな映像という彼の武器が、既存のスタイルとは違えど、しっかりと本作に特徴づいていることだ。バラエティー番組と映画では違うのは当たり前であり、ポップでキャッチーな感覚は失われているのだが、そのことがかえって、同じ土俵での違う表現方法というタカハタ秀太のクリエイターとしての深みとプライドが感じられた。 |
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