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天才野球少年の成長物語 あさのあつこ作のベストセラーの同名小説が原作。スポーツの根性物語、いわゆるスポ根モノではないのだが、ちょっと「巨人の星」のようなテイストを感じる作品だ。 キャッチャーを「女房」と称することがある。目立つポジションであるピッチャーを支える役目をなぞらえたことが所以であり、同時にピッチャーとキャッチャーの関係が夫婦のように大切だということにも暗に繋がっている。ただし、バッテリー間に相性はあるが、ここまでストイックに関係性を求めるのは、学生野球らしいとは思うのだが、おそらく稀だと思う。しかしストイックに求めるからこそドラマになるのであって、本作では、そこを通じて友情や成長が描かれている。 才能はあるが神経質で他を寄せつけない主人公の巧を林遣都が素晴らしく演じている。彼の少年らしい線の細さも主人公のキャラクターに適している。そして良いアドバイザーがいたのか、本人たちが経験者なのかはわからないのだが、その巧とキャッチャー豪を演じる山田健太の野球をする姿は完璧。野球の演技がサマになってないと作品のクオリティは極端に下がるのだが、実にサマになっている。意外だったのが岸谷五朗。色々な役ができる俳優ではあるのだが、頼りなく、もし実在するなら影が薄いだろうと思える父親役を、こうも完璧に違和感なく演じているのは驚いた。奥の深い優れた俳優だとあらためて実感した。 少し気になるのは巧に対する周りの対応。すべての登場人物ではないのだが、どこか腫れ物を触るような対応だ。有名校の運動部員の卑劣な犯罪の報道を耳にすることがある。有名校の運動部員だから目立って報道されるのかもしれないが、もし自分には才能があるのだから何をしても許されると思っていたり、周囲の人間が常日頃から才能があるのだから大目に見てやろうなどという態度で接しているのならば大変な見当違いである。特化した才能を育てるのは大切だが、それ以上に人間性を育てるのが大切なのだと思う。一目置かれるのはあくまでも才能のみであり、それ以外の人間性はしっかりと学び、しっかりと育てなければならないのだと思う。もちろん映画は道徳を描かなければいけない訳ではない。天才を取り巻く微妙な人間関係も本作には描かれている。 |
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