自分勝手な映画批評
バック・トゥ・ザ・フューチャー バック・トゥ・ザ・フューチャー
1985 アメリカ 116分
監督/ロバート・ゼメキス
出演/マイケル・J・フォックス クリストファー・ロイド
高校生のマーティ(マイケル・J・フォックス)は登校前にドク(クリストファー・ロイド)の家に立ち寄る。そこに不在だったドクから電話がかかってきて、夜、実験を手伝ってほしいと頼まれる。

エンターテインメントの面白さを満喫できるSF冒険物語

よく考え、よく錬られた制作者側の意図と熱意と誠意が伝わってくる名作。タイムトラベルを題材にした効力を最大限に活かしているのが本作の勝因だろう。

数多くのギミックが、ほぼすべてにおいて素晴らしい作用を生んでいる。過去と現在がしっかりと呼応しているのが実に面白い。ダウンジャケットを救命胴衣に間違えられ、コーヒーショップで注文が通じず、ウエイターは30年後の市長。下着に入ったカルバン・クラインのロゴは自身の名前だと勘違いされ、当時、俳優だったロナルド・レーガンが大統領になっていることも信じてもらえず、終いにはあの歴史的な名曲の誕生秘話が…等々。まるでこういったネタありきで製作されたのではないかと思う程、本当に上手く出来ている。主人公マーティが履いていたナイキのスニーカーがコンバース・オールスターになっているのも嬉しかったりする。

そういった脚本も素晴らしいのだが、それに答える俳優陣も良い。マイケル・J・フォックスは当時日本でも放映されていたコメディテレビドラマ「ファミリータイズ」の撮影が忙しく、当初、出演を断ったそうだが、本作で主役であてがわれた違う俳優が降板させられた為、再びこの役が巡ってくる。彼にとってこのアクシデントが結果的に彼をスターにすることになる。彼のアイドルっぽい容姿は本作に華を与え、コメディドラマをやっていたせいもあるのだろう、ユーモアのセンスも抜群だ。相棒ドクを演じるクリストファー・ロイドも素晴らしい。ステレオタイプの発明者というよりもインチキ博士といった風貌でのテンションの高い彼の演技は有無を言わせない面白さがある。タイトルをこちらに向かって叫ぶシーンは名シーンだと思う。マーティの両親と嫌なヤツのビフも実にいい味を出している。彼らは現代と30年前と同じ俳優が扮している。現代の彼らの老けた容姿は特殊メーキャップである。

主題歌はヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラブ」。当時の彼らの人気は絶大で、本作とのタイアップがなくてもこの曲はヒットしたであろうが、やはりあのイントロを聞くと本作を思い出してしまう。冒頭、ヒューイ・ルイスはメガネ姿でバンドのオーデションの審査員役で出演している。パワフルな歌唱が持ち味のヒューイ・ルイスが「音が大きすぎる」とダメ出しするシーンにも作り手の遊び心を感じる。高揚感と疾走感を兼ね備えた劇中曲も良い。

そして忘れてならないのが、タイムマシンとなるデロリアン(DMC−12)。ステンレスのボディと跳ね上がるガルウイングドアは近未来を感じさせた。生産台数の少ないこの希少車のプレミアム感も本作に良い効果を与えている。


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