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もう仁義などない 堕ちて行った男たちの生きざまを描いた作品。 本作は香港ノワールと呼ばれるジャンルに属する作品らしい。詳しくはないので間抜けな事しか言えないのだが、香港ノワールとは自然発生的なオリジナルではなく、様々な作品の影響を受けて発生したものらしい。影響とは模写して終わってしまう、もっとハッキリ言えば物まねで満足してしまう場合が往々にしてあると思うのだが、しっかりと咀嚼して自分のものにし、ジャンルとして文化にまで発展させた事は素晴らしい事だと思う。 香港マフィアの幹部ホーは後輩のシンを連れて台湾にニセ札の取り引きに行く予定になっている。ホーには病床の父と学校を卒業する弟キットがいた。キットの卒業式の日、キットに会いに行ったホーは、そこで初めてキットが警官になる事を知る。父はホーの稼業を知っている。しかしキットは知らない。父からキットの為に足を洗うように諭されたホーは納得をし、台湾での取り引きを最後にマフィアを辞める事を決意するのだった。 冒頭こそ従来の香港映画らしいコミカルな感じを匂わせるのだが、それもごく僅か。次第に闇が覆い、最終的には後戻りが出来ない場所へと到達する。退路を断ってまでも執念を貫き通そうとする男たちの生きざまを描いた本作は、挽歌の名に相応しい哀愁たっぷりの作品だと言えるだろう。 率直に言って多少大味に感じる節もあるのだが、それは別段問題にはならないだろう。逆に、その事で却ってテーマが強調される事となる。あくまでも本作は、仁義を重んじる不器用な男たちの心意気を味わう作品なのである。 本作はチョウ・ユンファがブレイクした作品であるようだが、実質的な主人公はティ・ロンが演じるホーであり、ホーのジレンマが物語を常に主導して行く。本作の趣旨を分かりやすく体現しているのはホーだと言えるだろう。演じるティ・ロンが素晴らしい。悩める姿を繊細に、辿り着いた決断を男らしく魅せる演技は見事である。 チョウ・ユンファも負けてはいない。本作でのブレイクも納得のカリスマ性のある圧倒的な存在感を見せつける。レスリー・チャンの若々しさも物語には不可欠な要素である。 余談だが、チョウ・ユンファと劇団ひとりは本当によく似ている。世の中には自分に似ている人が3人いると言うが、間違いなく互いの3人の中に入るだろうと、余計なお世話ながら感じてしまった。 |
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★前田有一の超映画批評★ |
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