自分勝手な映画批評
アマルフィ女神の報酬 アマルフィ 女神の報酬
2009 日本 125分
監督/西谷弘
出演/織田裕二 天海祐希 佐藤浩市
近づくクリスマスに賑わうローマの夜。その賑わいとは似つかわない表情で黒田(織田裕二)と紗江子(天海祐希)はホテルに入った。物語は、その前日、12月21日に遡る。

スーパー外交官の奮闘

イタリアで発生した日本人の少女誘拐事件と、その裏でうごめく陰謀を描いた作品。

本作はフジテレビ開局50周年記念と銘を打たれた作品だ。その事は、私にとってあまり意味を成さないのだが、テレビで馴染みあるキャストを配したのはテレビ局製作の作品らしいと言えるだろうし、そのキャストに主役級の豪華な俳優陣を揃えたのは、開局50周年記念の名に相応しいと言えるのかも知れない。

目を奪われるのは、イタリアの荘厳で美しい景色や雰囲気であろう。日本にも昔ながらの日本の味わいがあるように、イタリアにも伝統を感じさせる味わいがある。そんな感慨を強く呼び起こされる程、魅力的なイタリアを堪能出来るのではないかと思う。サラ・ブライトマンの歌声も本作を印象づけるのに大きな影響を与えていると言えるだろう。

だが、単に人気日本人俳優と由緒ある異国の情緒とをマッチングさせただけの作品ではない。しっかりとしたストーリー展開、特に中盤まではミステリーとして大変に見応えがあると思う。そして中盤以降は、それまでとは違ったテイストで物語は進行する。

そして、それが成立するのも、見てくれだけではなく、しっかりと絵になる俳優陣がそれぞれの持ち味を発揮しているからであろう。特に佐藤浩市の存在は大きく、彼がいるだけで作品が引き締まるように感じた。

ただ、私的に少々残念に思うのは天海祐希の役柄だ。彼女自身はしっかりと役に成り切ったとは思うのだが、彼女の持つ強い女性のイメージを本作に持ち込めば、ミステリーあるいはサスペンスとして、もうひとつ上のレベルの作品になっていたのではないかと思う。

しかし、その方向に進まなかった事で、登場人物の背景や人間性を描くスペースを確保出来たのだとも思う。この辺りのセンスは、目から入る情報は異なれど、日本映画だと実感する部分ではないかと思う。


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