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不徳から始まった煮え立つ愛の行方 妻と愛人との間で揺れ動く男性の姿を描いた作品。マルガレート・マッツァンティーニの「動かないで」が原作。彼女の夫であるセルジオ・カステリットが監督と主演を務める。 どこの国でも男はどうしようもない生き物なのだろうか? 「本能のまま」なんて言ったら聞こえは良いが、それは無責任で無自覚な大人の卑怯な言い訳でしかない。しかし理屈では説明出来ない、理性では抑えきれない愛も実在するのだろう。それが良いか・悪いかは別にして。 本作で描かれる愛はエキサイティングでダイナミックだ。秘め事だから燃え滾るのか? それとも遅れて出逢えた真実の愛だからなのか? いずれにせよ歯止めが効かない背徳な恋愛は、肉体だけでなく、心の奥底まで蝕みながら、艶かしい炎を燃やし続ける。 しかし、自分が思い描いたように地球は回らない。男が選んだ道、そして選ばなかった道。引きちぎられた男の本能は、罪悪感を伴いながら彷徨い続ける。そして自らの愚かさを知り、愛した女性の偉大さを思い知らされるのだろう。だが、決して時は後戻りしない。 セルジオ・カステリットが身勝手だが純粋な男を好演。哀愁を漂わせながら葛藤する姿は、日本人には表現出来ない、イタリアの髭面伊達男ならではの味わいに感じる。 だが、本作は何と言ってもペネロペ・クルスだ。そもそもイタリア語作品というだけでも大変であっただろうが、何よりスターの輝きと引き換えに挑んだ体当たりの演技は圧巻。簡単に言えば、やつれた、はすっぱなおばさん。もう少し丁寧に言えば、ちゃんと着飾れば綺麗に見えるだろうと思わせる女性を全うしている。 本作の彼女が更に素晴らしいのは、そんな役柄であっても、実に可愛らしく、愛おしく思えてしまう事だ。輝きを消して役に成り切る。その上で役に即した新たな魅力で、しかも愛くるしい魅力で観る者を引き付ける。 ペネロペ・クルスの演技があるからこそ、ある角度から見れば、狂おしい純愛として成立する。だからこそ苦しくて切なくて胸が張り裂けそうになる。クラウディア・ジェリーニ演じる妻の存在も実に良く、その思いを一層鮮明にさせる。 作中に僅かに聞こえたテレンス・トレント・ダービーが懐かしかった。 |
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