自分勝手な映画批評
大いなる遺産 大いなる遺産
1998 アメリカ 110分
監督/アルフォンソ・キュアロン
出演/イーサン・ホーク グウィネス・パルトロー ロバート・デ・ニーロ  アン・バンクロフト
海で一人、少年フィンは絵を描いていた。そこに突然、海中から謎の男(ロバート・デ・ニーロ)が現れ、フィンに襲い掛かった。

知らずに宿命を背負った一途な男の物語

原作はチャールズ・ディケンズの小説。初恋を忘れられない男の数奇な半生を描いた作品。何故か大富豪の謎の婦人に気に入られた少年が、婦人の姪の少女に心を奪われ物語は動き始める。

ミステリーの要素も多分に含んでいる本作だが、そのベースを司るのは二人の女性、グウィネス・パルトロー演じる主人公フィンが恋焦がれる女性エステラとアン・バンクロフトが演じる謎の婦人ディンズムアだ。

アン・バンクロフトの魔女のような奇抜な存在感は、説明無しの不穏な婦人の行動に、変な言い方だが、説得力を与える。

そして何よりグウィネス・パルトローのセクシーな魅力が本作の重要なポイントとなる。彼女の官能的な誘惑は想像力を刺激する。魔女の血を引く魔性の女の不可解な振る舞いはフィンのみならず、観ている者をも惑わせる。

この女性陣二人がミステリアスな不思議な世界へ誘うのだが、イーサン・ホーク演じるフィンが現実に引き戻す。振り回されながらの奮闘振りは、まるで熱き血を注入したかように本作にエネルギッシュなパワーを与える。だが再びミステリーが訪れる…。

女性心理に翻弄される主人公と同じように、あくまでも観ている者に掴みとらせないストーリーは秀逸。そんな中で最後まで一貫して優しさを保ち続ける不器用な男の心意気に胸を打たれる。


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