自分勝手な映画批評
許されざる者 許されざる者
1992 アメリカ 131分
監督/クリント・イーストウッド
出演/クリント・イーストウッド ジーン・ハックマン モーガン・フリーマン
1880年、ワイオミング州ビッグ・ウイスキーで娼婦がカウボーイに乱暴される事件が起きる。縛り首にと願う娼婦だが、保安官のリトル・ビル(ジーン・ハックマン)は馬を7頭差し出させる事で治めてしまう。

伝説の男が舞い戻った世界

リタイアしていたアウトローが、もう一度、賞金を稼ぐ為に立ち上がる西部劇。監督は主演も兼ねるクリント・イーストウッド。

クリント・イーストウッドのキャリアを上手く活かした、彼ならではの作品だと言えるのかも知れない。例えば本作でイーストウッドが演じるマニーを、何の関係も脈絡もないのだが、彼が荒野の用心棒で演じたジョーの何十年後かの姿として見るのも面白いのではないかと思う。

極悪非道、冷酷無情なアウトローだったマニーは、妻となる女性と出逢い改心し、子供を儲けて穏やかに暮らしていた。しかし、妻に先立たれ、幼い子供を育てながらの生活は困窮していた。そんな時、賞金の懸かったならず者の存在を知り、子供達の為、昔の稼業に再び足を踏み入れる。だが、10年のブランクは大きく、馬に乗る事すらままならない。

本作で描かれているのは、男という生き物の悲哀だ。「若い者には負けられない」なんて頭でっかちなプライドは通用しない、年功序列もない弱肉強食、力なき者は有無も言わさず淘汰される、実力だけが頼りのシビアな男の世界が本作の舞台なのだ。

そこに、イーストウッドのキャリアが上手い具合にオーバーラップする。西部劇のヒーローを演じてから随分と時が経った彼が、年老いたヒーローの成れの果てを演じる。決してカッコ良くはない。しかし愛する者の為、守るべき者の為に生死を賭けた実力の世界に戻って来る。それこそ男の生きざまだろう。但し、非情な世界を生きて来た男の血潮は彼の体から抜けきってはいなかった。錆ついていてもナイフはナイフなのだろう。

狭いところに懸命を賭ける男という生き物は、どうしようもない生き物なのだろうか? だが、もはや時代遅れかも知れないそんな生き方に、男たる所以を感じてしまう。

イーストウッドのみならず、脇を固める名優達も実に素晴らしい。まさに助演、良き相棒のモーガン・フリーマンと憎々しい程のクセ者の貫禄を見せつけるジーン・ハックマン。彼らの働きが、本作をさらに上の頂へと押し上げているような気がする。

第65回アカデミー賞、作品賞・監督賞・助演男優賞(ジーン・ハックマン)・編集賞(ジョエル・コックス)受賞作品。


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