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本当の悲しい出来事 舞台は1987年のルーマニア。女子大生の違法な中絶手術が巻き起こす人間模様を描いた作品。どぎつい描写もあり、観る者に優しい作品ではないのかも知れないが、実に構成が巧妙であり、中々の傑作ではないかと思う。 胸騒ぎを感じつつも、物語は淡々と始まる。派手な装飾はない、質素で閉息感を感じる作風だ。その事が妙に張り詰めた緊迫感を漂わせる。 望まぬ妊娠をしたルームメイトの為に奔走する主人公のオティリア。不便で不十分な環境、違法な中絶手術、そしてお金。様々な困難に直面し、オティリアの心境に変化が生じる。変化と言うよりも、押さえていた感情が呼び起こされたと言った方が良いのかもしれない。しかし、感情が表立って爆発する訳ではない。この辺りがとてもリアルだ。しかし、それだけでは終わらない。事が進むに連れ、本作はサスペンスの様相を呈する。 表向きにはショッキングな出来事を用いているのだが、本作の真相は人間関係における人間心理だ。そう考えると、ありふれた平凡なテーマだと言えるだろう。だが、インパクトのある題材と結びつける手法は絶妙で、制作者の思惑にまんまとはまり、ある種、キツネにつままれたような感覚に陥るが、それは同時に優れた手腕に大いに感心させられる瞬間ではないかと思う。 本作は1日の出来事しか描かれていない。しかも、登場人物も決して多くない。手広くではなく、丹念に一ケ所集中するような描き方は素直に物語にのめり込ませる。そして、のめり込ませるだけの技量を備えた作品だと思う。 |
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