自分勝手な映画批評
夜霧よ今夜も有難う 夜霧よ今夜も有難う
1967 日本 94分
監督/江崎実生
出演/石原裕次郎 浅丘ルリ子 二谷英明 高品格 佐野浅夫
外国航路船の船員の相良(石原裕次郎)は、神戸港に帰港する直前の船の上から恋人の秋子(浅丘ルリ子)に電話をし、プロポーズをした。

いいよもう、みんな遠い昔の話だ

運命によって引き裂かれた男女の切ないラブストーリーを描いた作品。

劇中に何度も流れる本作の作品タイトルと同名の主題歌は、歌手・石原裕次郎の代表曲の1つである。裕次郎は歌手としても俳優と同等の認知があると思うので、裕次郎の代表曲という事は、すなわち国民的に知れ渡った楽曲という事でもあるだろう。

楽曲「夜霧よ今夜も有難う」には吉田拓郎や、ちあきなおみのカバーが存在する。ちょっとAOR風にも聞こえる拓郎の「夜霧よ今夜も有難う」、ちあきのディーバな「夜霧よ今夜も有難う」も大変素晴らしく、一聴の価値はある。

外国航路船の船乗りの相良は、恋人の秋子と結婚する為に神戸の教会で秋子を待っていた。しかし、いくら待っても秋子は現れなかった。秋子は教会へ行く途中で交通事故に遭ってしまっていたのだった。その日以来、秋子の行方は分からなくなってしまった。4年後、相良は船乗りを辞め、横浜でナイトクラブを経営していた。ただ、その裏側で、密出国をあっせんする逃がし屋の仕事もしており、相良の裏稼業を聞き付けた事情を抱えた様々な者たちが相良を頼って訪ねていた。ある日、シンガポールへの密出国を希望する夫婦が相良の元に現れた。その夫婦の妻は、かつての相良の恋人、秋子だった。

公言しているのかは知らないが、本作の下敷きにはハンフリー・ボガートの「カサブランカ」があるのは有名な話である。人知れぬ作品ならまだしも、映画史に燦然と輝く、超が付く程の有名な作品を下敷きとするのは、随分と大胆な試みであるだろう。

但し、すべてをトレースしている訳ではない。幾分かは名残はあるものの「カサブランカ」の大きな特色であった、戦時下の微妙な状態は再現していない。その分、日活アクション特有のハードボイルド色が前面に打ち出されている。なので「カサブランカ」とはニュアンスとタッチが異なる、ドメスティックな悲運のロマンスとして堪能する事が出来るのではないかと思う。

裕次郎のイメージは大きく分けて2つあると私は考える。1つは華々しくデビューした時からの、眩い青春スターとしてのイメージ。もう1つは、晩年まで続く「太陽にほえろ!」に代表されるボスのイメージ。本作公開当時、裕次郎は33歳。本作の時期は丁度、青春スターからボスのイメージへと移行する過渡期に当たるのではないかと思う。

但し、中途半端な時期だと言いたい訳ではない。我武者らな青年期を卒業し、脂が乗った時期でもある。そもそも本作のようなハードボイルドは、酸いも甘いも噛み分けた大人な年齢で演じるべきであるだろう。晴れてハードボイルドを演じるに相応しい年齢に達した裕次郎の演技は、本作の大きな見どころである。と同時に、少なからずボスへの予兆が垣間見れるのが興味深い。

ヒロインは浅丘ルリ子。難しい役どころなのだが、可憐と妖艶が同居する魅惑を武器に、切ない物語に儚くも美しく咲き誇っている姿は実に見事だ。

懐の深い二谷英明の演技も良い。また、高品格の役柄、演技が、後に石原プロで製作されたテレビドラマ「大都会」シリーズの布石のようにも感じられるのも面白い。

まだ改名する前、太田雅子の名前で出演している梶芽衣子の初々しい演技も必見。


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