自分勝手な映画批評
私は貝になりたい 私は貝になりたい
2008 日本 139分
監督/福澤克雄
出演/中居正広 仲間由紀恵 笑福亭鶴瓶 石坂浩二
昭和19年、高知の片田舎で理髪店を営む清水豊松(中居正広)は友人(マギー)の出征の見送りに行くのだが…

語り継ぐ悲劇

戦時中、上官の命令で無抵抗の捕虜に制裁を加え、負傷させた罪に問われる男の物語。本作は以前に映画で1度、TBSにてテレビドラマで2度製作されている。

私が印象に残っているのは、TBSの何十周年かの記念で、過去にTBSで放映された番組を振り返る特別番組での、本作のオリジナルとなる一番最初に製作された、フランキー堺が主演したテレビドラマ「私は貝になりたい」の紹介の仕方である。

TBSの過去の名立たるドラマ・バラエティ・音楽番組等を差し置いて、番組の一番最後に「私は貝になりたい」が重々しく紹介された。TBSにとって本作のシナリオは、同局の宝のように大切にされている事が伺えた。この先、また映像化される事もあるのではないかと思う。

勝てば官軍、勝った者が正義という図式が戦争では成り立つ。乱暴な言い方をすれば、勝った側の持論が正論。今の時代ではありえないという意見もあるのかも知れないが、私はそうは思わない。これまた乱暴な言い方をすれば、武力で相手を制圧しようとするのならば、その根本にあるのは勝てば官軍という理論なのだと思う。

その理論を基本とするならば、あらゆる事が負の方向に不条理に連鎖して行くだろう。田舎の一介の理髪師である中居正広演じる豊松も、その渦中に巻き込まれて行く。豊松は上官の命令により捕虜となったアメリカ兵に刃を向ける。いくら人道から逸脱していようが、それが豊松に課せられた、全うすべき職務なのだ。

ただ、忘れてならないのは、そのアメリカ兵が捕虜となったのも、おそらく職務を遂行した為である。そして彼は名もなき兵士ではなく、人格も人生も持つ、1人の人間なのだ。本作には、戦争の持つ恐ろしさと、戦争に翻弄された人達の悲劇が、なす術なく、ただただ悲しく描かれている。

狙い過ぎに思えるシーンもあるのだが、エンターテイメント性を考えた故なのではないかと思う。スケール感で言えば、焼け野原や巣鴨プリズンの外観の描写に驚いた。実際には、その描写がなくても本作は成り立つと思うのだが、その描写を挿入することにより、ハリウッドの大作映画のようなスケールを生み出しているように思える。

出演陣も豪華だ。テレビで馴染みある顔も多い。テレビどおりのイメージの人、テレビとは違うイメージの人とそれぞれ違いがあって面白く感じた。ただ、全体を通じて現代風味な感じを覚える。後世に伝えるといった意味では必要なことなのかも知れない。


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