自分勝手な映画批評
私をスキーに連れてって 私をスキーに連れてって
1987 日本 98分
監督/馬場康夫
出演/原田知世 三上博史 布施博 高橋ひとみ
サラリーマンの矢野(三上博史)は仕事を早々に切り上げ、夜、スキー場に向かう。

ブリザー、ドブリザー

ホイチョイ・プロダクション製作。当時の若者のトレンドに影響を与え、一大ブームを作った本作は、映画史と言うよりも日本のカルチャー史に残る作品と言えるだろう。

基本的にはラブストーリーなのだが、恋愛模様をそれ程掘り下げた描き方はしていない。その分、思いのほかスキーシーンがフィーチャーされている。そう考えると、硬派とまでは言えないが、スキーを単なる恋愛要素の1アイテムとしてしか用いていないデート映画とはどこか毛色が違うように感じる。

私自身、毎週のように雪山に通っていた時期が数年間ある。そういう生活から離れて久しいのだが、本作での滑走シーンを見ているとその頃の記憶が呼び起こされる。そのくらい、スキーシーンの臨場感は見応えがあり、恋愛のみならずスキーの素晴らしさも疑似体験させようとするような意図も感じられる。ただし、恋愛部分がおざなりにされている訳ではなく、しっかりと完結しているからこそ本作はロマンティックに成立している。

本作は時代性を考慮しなければならない面はある。流行は時が過ぎれば残念ながら滑稽に映る場合もある。だが、公開時から随分と経った現在に本作を観た時、当時の最先端の羨望を求めた作り方には潔さを感じる。実際、本作の影響力は大きく、ゲレンデでは、トレイン走行と呼ぶらしいのだが、男女数人でボーゲンを列ねて滑る光景を幾度も目にした。恥ずかしながら私もやったクチ。危ないので禁止しているゲレンデも多いようだが…。また、迫力あるカーアクションシーンも単なる作品の賑やかしではなく、当時、盛り上がりを見せていたモータースポーツへのトレンドからのアプローチのようにも考えられる。

忘れてならないのはユーミンの楽曲だ。「サーフ天国、スキー天国」「恋人がサンタクロース」「BRIZZARD」は私の中では雪山の定番。後に他のミュージシャンからもゲレンデをターゲットにした楽曲は何枚もリリースされ大ヒットもするのだが、この3曲は色褪せない。ただし、これらは本作の為に書き下ろされた楽曲では無い。昔のユーミンの曲を引っぱり出してきた格好だ。そう考えると、新しいモノを作り出そうと言うよりも、良いモノを伝えようとするのが本作の制作者の本心なのかもしれない。

もうひとつの重要なポイントはキャスティングだ。角川女優だった原田知世は本作の大ヒットで角川のイメージから脱却し新たな存在感を見せつけたように思える。実の姉である原田貴和子との共演も見どころだと言えよう。

もうひとりの主役である三上博史は本作でブレイクした。高橋ひとみもそうなのだが、元々、寺山修司に見い出された彼が本作の矢野のような純朴な青年を演じるのは意外に感じた。彼は本作の後、同じような役柄を何作か演じる事になる。現在ではアバンギャルドな個性でも高く評価されスターになれると思うのだが、当時では難しかったのだろうか?と勝手な憶測を巡らせてしまう。

本作のタイトルはアメリカの歌、及び映画の「私を野球に連れてって(Take Me Out To The Ball Game)」から拝借したのだろうと考えられる。余談ではあるが、この歌はアメリカ・メジャーリーグ・ベースボールの7回表終了時(セブンス・イニング・ストレッチ)に聞くことが出来る。


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