自分勝手な映画批評
ドラゴンへの道 ドラゴンへの道
1972 香港 100分
監督/ブルース・リー
出演/ブルース・リー ノラ・ミャオ チャック・ノリス
香港からの航空便が30分早く到着してしまった為、迎えがまだ来ておらず、ロン(ブルース・リー)は言葉の通じないイタリアの空港で居心地の悪い時間を過ごしていた。

映画史上に燦然と輝く決闘シーン

イタリア・ローマを舞台に、ギャングに立ち退きを迫られる中国料理店を手助けする若者の活躍を描いたアクション作品。ブルース・リーは主演のみならず、監督・脚本・製作・音楽・武術指導と多岐に渡り本作に携わっている。

本作の最大の特徴は全編イタリアを舞台にしている点であろう。どのような意図で、このような設定になったのかは私には分からない。ただ、おそらく将来的には海外での活躍を考えていたであろうブルース・リーが、海外を舞台にした作品を製作した事は、ことさら興味深く感じられる。

但し、本作は海外を安直に賛美している訳ではない。異国の地での外国人の疎外感が本作には描かれている。その事は、現在に比べてまだまだ世界が広かった時代を実感させる効果をもたらすと共に、実際にアメリカで長く生活をしていたブルース・リーの経験が活かされているのではないかとも想像してしまう。

ストーリーは捻りはあるものの、決して複雑ではなく明快であり、ブルース・リーのアクションを存分に堪能出来る構成になっている。そしてテンポの良さが本作には感じられる。その要因には明快なストーリー展開がまず第一に挙げられるとは思うのだが、ブルース・リーの演技も影響しているように感じる。

ブルース・リーと言えば、怪鳥音と呼ばれる「アチョー」の叫び声と共に見せるアクションシーンでの、まるで狂気のようなシリアスな顔が思い浮かぶのだが、本作の特に前半では、少しとぼけた、コミカルな演技を披露している。この演技が本作の絶妙なテンポの一翼を担っていると思うし、同時に、監督であるブルース・リーの思考を伺い知る事が出来るようで面白く感じる。もしブルース・リーがキャリアを継続出来ていたとしたら、もしかしたらコメデイータッチの作品も存在していたのかも知れない。

本作の最大の見せ場は、クライマックスの決闘シーンである。舞台はローマのコロッセオ。相手は実際の空手の世界チャンピオンであるチャック・ノリス。まるで彫刻のような肉体を持つ男二人が、歴史的価値のある地で戦う事自体が絵になるのだが、ピンと張り詰めた緊張感が漂うそのファイトの内容も実に素晴らしい。もはやエンターテインメントのアクションの域を超えた、ひとつの芸術と呼ぶに値する程の珠玉の名シーンであると思う。

本作が念頭にあったのかは不明だが、本作と類似点を多く感じる、ジャッキー・チェンをはじめとするブルース・リーの後継者たちが製作したスパルタンXと本作を見比べるのも大変有意義であろう。


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