自分勝手な映画批評
スリーデイズ スリーデイズ
2010 アメリカ 134分
監督/ポール・ハギス
出演/ラッセル・クロウ エリザベス・バンクス タイ・シンプキンス
ジョン(ラッセル・クロウ)とララ(エリザベス・バンクス)の夫婦は友人夫婦と一緒に食事をしていた。会話の成り行きで、ララと友人夫婦の妻がエキサイト。終いには言い争いになってしまう。

あの子、またキスしてくれる?

妻の無実を頑に信じる男の大胆な行動を描いた作品。2008年公開のフランス映画「すべて彼女のために」のリメイク。

他人への信頼とは、どこまで持続可能なのだろうか? それは人生のひとつの課題ではないかと思う。信頼とは、人によって基準の差は大いにあるが、一瞬にして崩壊してしまう可能性を秘めているのは誰もが知るところである。

語弊がある事を承知で言えば、一瞬にして崩壊してしまうような、そこまでの信頼ならば気軽に持てる事だろう。だが、その先もつき合うのならば、それ相当の覚悟が必要になる事だろう。つまるところ信頼の持続とは、大袈裟に言えば身を滅ぼすまでの覚悟、少なくとも自分の安全地帯から踏み出す覚悟が必要ではないかと思う。





大学教授のジョンは、妻のララ、息子のルークと平凡ながらも幸せな生活を送っていた。そんな一家の幸せが、突如として一変してしまった。ララが殺人事件の容疑者として逮捕され、連行されてしまったのだ。身に覚えのないララは、当然、無実を主張。しかし、状況証拠がララを犯人とし、裁判でも負け、ララの刑は確定してしまった。絶望したララは刑務所で自殺を図る。一命を取り留めるララだったが、そんな状況を目の当たりしてジョンは、もうララを助ける、まともな手段はないので、ララを刑務所から脱獄させようという考えに辿り着いてしまうのだった。

妻の奪還を目指す主人公ジョンは真っ当な大学教授。当然ながら奪還のノウハウがある訳ではなく、裏社会に通じている訳でもない。しかし、大学で教鞭を執るインテリではある。なので、畑違いの仕事だとしても、その道のプロフェッショナルのような手際の良い仕事にはならないにしても、綿密な計画を練り上げて行く。

素人が困難極まる計画を、どのように立てて、どのように準備し、どのように実行するのか? それが本作の筋となる。もちろん素人なので順風満帆には進まない。手痛い失敗も繰り返される。そんなジョンの行動を観ていれば、ヤキモキさせられる事だろう。ただ、そのヤキモキ感こそが上質のサスペンスとミステリーを紡ぎ出している。

ヤキモキと同時にモヤモヤ感が強いのも本作の特徴である。物語のキッカケとなる事件の詳細は、冒頭では明確になってはいない。それは、あまりにも不親切であり、不手際のように感じるのだが、実は、あえてボカす事でサスペンスとミステリーの構築の一翼を担い、且つ広げている。ヤキモキとモヤモヤを巧みに操り、最後まで、どちらに転ぶか分からない、最後まで気を持たせるシナリオ、演出は本当に見事である。

そして、事件の詳細を明確にしない事は、ジョンのララに対する絶対的な愛を際立たせる事にもなっている。法律を、世間を敵に回しても絶対にララを信じるジョン。強靱な愛の力が、何より物語を突き動かす原動力になっているのである。

ブライアン・デネヒー演じるジョンの父親の姿に心を打たれる。ジョンがララを想う気持ち、つまり夫婦愛は壮大だが、親が子を包み込む愛情は、ある意味、それ以上に壮大なのかも知れない。


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