自分勝手な映画批評
シャッターアイランド シャッターアイランド
2010 アメリカ 138分
監督/マーティン・スコセッシ
出演/レオナルド・ディカプリオ マーク・ラファロ ベン・キングスレー
1954年、ボストン湾を航海中の船の中でテディ(レオナルド・ディカプリオ)は酷い船酔いに苦しんでいた。どうにか持ち直して甲板に出ると今回の事件捜査の相棒となるチャック(マーク・ラファロ)が立っていた。

モンスターのまま生きるか、善人として死ぬか

原作はデニス・ルヘインの小説。刑務所から脱走した女性の行方を追う連邦保安官の姿を描いた作品。

かなりミステリーに特化した作品だ。そしてサスペンス色の強い作品でもある。ミステリーとサスペンスが親密な関係である事は言うまでもないが、まさに本作は、その関係性の手本であるかのようであり、上質なミステリーが濃厚なサスペンスを呼び起こしている。

シャッターアイランドと呼ばれる精神疾患のある犯罪者を収容する孤島の刑務所から一人の女性が脱走した。事件を担当する事となった連邦保安官テディは、島へ向かうと船の上で初対面した相棒チャックと共に島に上陸し捜査を開始する。しかし、コーリー院長をはじめとする刑務所の関係者たちは必ずしも協力的ではなく、捜査は難航する。ただ一方で、テディがこの島に来たのには、捜査以外にもうひとつの目的があった。

一見すると刑事モノの様相を呈しているのだが、核心は違うところにあり徐々に実態が明らかになる。本作のテーマとなるのは信頼であり、深層心理に訴える作品であると言えるだろう。それは舞台となる孤島の刑務所という特種な場所での、ある種の異様な雰囲気と相まって観る者の心に圧力を掛け続ける。

自分への信頼、自信を持てない人は世の中にはいるのだろう。しかし、そんな人でも最低限の自信は持っているだろう。そうでなければ、社会生活に支障を来してしまう。自身の行動の些細な事まですべてが信じられなかったら、とてもじゃないが日常を送る事は困難であるだろう。

それは社会に対する意識も同じである。社会に強い不信感を抱いている人もいるのかも知れない。だが、少なくとも現在の日本では、社会に対する信頼はゼロではない筈。もしゼロであるとしたら、社会は何ひとつ機能しないであろう。

だが、それらの信頼に絶対的な根拠はあるのだろうか? もちろん明確に根拠があるものもあるだろう。しかし、根拠を探しても見当たらない、あやふやな思い込みだけが根拠になっているものもあるのかも知れない。だとしたら、信じるものが崩壊してしまう可能性は十分考えられるだろう。

森羅万象、必ずしも厳格な因果関係が証明されている訳ではない。もう少し踏み込んで言えば、必ずしも厳格な因果関係を必要としないとも言えるのかも知れない。そんな理解不能な領域は、夢のようなロマンチックを生み出す事もあるだろう。しかし一歩間違えれば、ブラックホールのように巨大で無限の落とし穴にもなるだろう。

本作は、その辺りの心理に揺さぶりを掛けてくる。免疫のない人は本作に相当な衝撃を覚えるのかも知れない。ただ、もしかすると免疫のある人は早い段階で、それなりに見当がつくのかも知れない。それでも尚、惹き付ける要素は多分に詰まっており、しっかりとした見応えを感じさせる。


>>HOME
>>閉じる





★前田有一の超映画批評★

おすすめ映画情報-シネマメモ