自分勝手な映画批評
十二人の怒れる男 十二人の怒れる男
1957 アメリカ 96分
監督/シドニー・ルメット
出演/ヘンリー・フォンダ リー・J・コッブ ジャック・ウォーデン
父親殺しを問われた18歳の少年への裁判。裁判の内容から少年の有罪は確実かと思われたのだが、只1人、8番の陪審員(ヘンリー・フォンダ)だけは少年の無罪を主張する。

筋の通った疑問

裁判の12人の陪審員たちが有罪か無罪かの評決に達するまでの様子を描いた作品。本作は終始、この議論のみで構成され、ほぼ全編に渡り、その議論が行われる一室のみで物語が進行して行く。従来の映画とは異なる作中の状況は、あたかも舞台演劇を鑑賞しているような思いにも成り得る。実際に何度か長回しのシーンもあり、その精度も素晴らしい。

正直に申し上げて強引に思える展開はあるのだが、白熱する議論には大変迫力があり、臨場感を持って引き込まれて行く。前述のとおり、密室での議論というワン・シチュエーションなので、12人の登場人物の背景を深く掘り下げている訳ではない。登場人物の名前すら基本的には公開していない。しかしその限られた状況で、しっかりとキャラクターが分かるような描かれ方をしているので物語を豊かに築き上げていく。

あまりにも有名な作品な為、使い古されたアイデアではあるのだが、裁判員制度を採用した日本でも本作に似たような作品が今後増えるのかもしれない。また、現実社会の問題として本作のような、しっかりとした議論が行われることを願いたい。


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