自分勝手な映画批評
シザーハンズ シザーハンズ
1990 アメリカ 105分
監督/ティム・バートン
出演/ジョニー・デップ ウィノナ・ライダー ダイアン・ウィースト
雪の降る夜、少女の「雪は、なぜ降るの? 雪はどこから?」の問いかけに、老婆はハサミが手だった男の昔話を始める。

今年も冷たい雪が降る

ある発明家に作り出された両手が大きなハサミの男を描いた作品。この奇妙な設定からして分かるように、おとぎ話のようなファンタジー。シンプルに構成されたストーリー、登場人物の設定も分かりやすく、観る者をうまい具合に誘導して行く。主人公の不遇な人造人間エドワードをジョニー・デップが演じる。彼の風変わりなキャリアの第一歩と言えるのかもしれない。

本作のポイントはもちろん両手のハサミ。しかし、その設定以前に主人公エドワードが純真無垢でなければ成立しない。物語の本質からはずれてしまう不毛な話だが、エドワードのこの気質だけでもファンタジーとして成立するのではないかと思う。そんな彼が不自由な両手を使っての奮闘は実にコミカルであり微笑ましく楽しい。更にはジョニー・デップが演じる事によって一層愛らしさが増しているのではないかと思う。

もう1人、エドワードの良き理解者、ダイアン・ウィースト演じるペグの存在も大きい。彼女が本作のファンタジーの扉を開けたと言っても過言ではないだろう。彼女のおっとりとしたとぼけたキャラクターが物語の道筋を引いて行く。物語でのエドワードのパートナーはウィノナ・ライダー演じるキムなのだが、作品として捉えた場合、エドワードのパートナーはペグなのかもしれない。彼女の優しさは、次第に短くなる髪型でも表現されている。

ビジュアル面でもファンタジーな要素は十分感じられる。ロックテイストを加味したようなエドワードの風貌はもちろんだが、20世紀半ばをモチーフとしているような舞台設定、カラフルな衣装や住宅は観ているだけでポップな気分にさせられ、パラレルワールドである印象を強く与える。

優しい婦人に連れられて、人間社会に舞い降りたエドワード。温かい家庭に迎えられ、自分の個性を活かして住民に馴染んで行くのだが、好奇の眼はあらぬ方向へと向かって行く…。

本作を観て感じたのはオードリー・ヘップバーンが出演しているような往年のハリウッドのロマンティックコメディに通じる面白さがあるという事だ。言い換えれば、往年のハリウッドのロマンティックコメディはファンタジーだったと言えるのかもしれない。またまた言い換えれば現代では、おとぎ話のようなファンタジー作品の中でしかロマンティックコメディは描けないのかもしれないとも感じた。

但し、本作はロマンティックコメディでは終わらない。異世界からの目線で地声の大きな者に先導される付和雷同な人間社会を風刺しているようにも思える。


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