自分勝手な映画批評
ラブコメ ラブコメ
2010 日本 93分
監督/平川雄一朗
出演/香里奈 田中圭 北乃きい 渡部篤郎 中越典子 塚本高史
朝、身支度を整え気合いを入れた真紀恵(香里奈)は生花市場へ行き、男性たちに混じって目当ての花の競りに参加した。

好きに理由がいるか?

原作は松久淳と田中渉の小説。すれ違いながらも関係を育んで行く若い男女の恋愛模様を描いた作品。

「ラブコメの女王」と言えばメグ・ライアンである。その作品群をラブコメの基本とするのならば、遡ればオードリー・ヘップバーンの作品の多くがラブコメに相当するのではないかと思う。つまり、きらびやかなアイドル性を持った女優を主人公に、コメディータッチで比較的カジュアルにラブストーリーを描いたのがラブコメ。日本ではトレンディードラマの誕生と同時に一気に浸透したように思う。

本作は、それらの手本を忠実に守ったような作品である。もっとも、そのものズバリの作品タイトルを付けたのだから当然と言えば当然である。

花屋の「松田花店」を営む真紀恵は男っぽい性格が災いしてか男運が悪く、彼氏が1年と11ケ月の間いない。ただ、その1年と11ケ月前に別れた彼氏、江島和俊の事を未だに引きずっていた。ある日、「松田花店」の様子を覗き見する怪しい青年がいた。青年の名は美晴。職業はアニメの脚本家。美晴は現在製作しているアニメの最終回の台本に行き詰まっていた。そのアニメというのは美晴自身の体験を反映させた作品であり、主人公は美晴本人でヒロインは初恋の相手。その美晴の初恋の相手が真紀恵だったのだ。美晴は現在製作しているアニメを思いついた時、懐かしくなって久しぶりに思い出のある人形町を散歩していた。その時に偶然「松田花店」にいた真紀恵を17年振りに見かけ、それ以来、真紀恵に対する気持ちが抑えられなくなっていた。一方、真紀恵は、行きつけのバーで偶然江島和俊と再会した。

難しい要素を出来るだけ排除し、恋愛を特化して描いている本作。こういった作風は、一般的には映画的ではないのかも知れない。テレビのスペシャルドラマで収めるべき、いやテレビでも、もはや取り上げられる事の少ない型遅れな作風なのかも知れない。

つまり、ライトな作風である為に、軽んじられる可能性が往々にしてある作品であるように思う。だが、そういった風潮は間違いだと私は思う。もちろん、恋愛ばかりが人生ではないし、恋愛を謳歌する季節の若い日でも恋愛以外にも色々とある筈である。そう考えれば、恋愛に特化する事を軽く見る傾向も仕方のない事なのかも知れない。

トレンディードラマの全盛で一気に乱発した感があるラブコメ。その反動からだろうか、いつの日からか重い十字架を背負わせるような設定持つ作品が多くなったような気がする。そのような作品の中に心に染み入る傑作があるのは確かだ。だが中には、ラブストーリーを際立たせる為に安易に重い設定、ハッキリ言えば、病気や死を持ち出す作品も見受けられる。

そんな作品には心底辟易とする思いである。何も病気や死を描く事が悪いとは思わない。しかし、大した調べもせずに、まるでアクセサリーやアイテムかのごとく作品を盛り上げる為だけに軽はずみに取り上げるのは、観ていて気分が良いものではないし、何より、そういった事で苦しんでいる人たちに対する冒涜に他ならないと思う。

本作は、あえてこういった表現を用いるが、重い十字架を背負わせるような小細工はしていない。だから周りと見比べれば異色と思えるような作品なのかも知れない。しかし、大切な真理は込められているし、詰まっている。まずは本作の、作品に取り組む潔い姿勢を評価したい。そして、真っ向勝負で清々しい満足感をもたらしてくれた事に感謝をしたい。

テレビドラマ的だと感じるのは、テレビドラマの常連を配したキャスティングの影響も大きい。また、ライトに感じるのは重鎮と呼ばれるような俳優を起用していない事が影響している事だろう。ただ、まったく問題はない。確かにテレビで見慣れた顔が揃うとテレビドラマと錯覚してしまいそうだが、制作者の真っ向勝負の表れだと受け止めても良いだろう。それに、皆が期待に違わぬ演技をしている。

それにしても、よほど相性が良いのか香里奈と田中圭はよく共演していると思う。本作でも抜群のコンビネーションを見せつけている。


>>HOME
>>閉じる













★前田有一の超映画批評★

おすすめ映画情報-シネマメモ