自分勝手な映画批評
NOEL ノエル NOEL ノエル
2004 アメリカ 96分
監督/チャズ・パルミンテリ
出演/スーザン・サランドン ペネロペ・クルス ポール・ウォーカー
雪で覆われたクリスマスイブのニューヨークで、ローズ(スーザン・サランドン)は高校時代の友人デビーと偶然再会する。幸せそうなデビーを見て、ついついローズは自分も幸せであるかのように振舞ってしまう。

クリスマスの魔法の効力

クリスマスイブからクリスマスにかけての人間模様を描いた作品。

単純な私は、日本中を席巻するクリスマスムードに踊らされる体質になっているようであり、その時期になると、信仰心とは関係なく気分が高揚し、何故かそわそわしてしまう。それは、満月の夜のオオカミ男のようなものなのかも知れない。

クリスマスを舞台にした本作ではあるのだが、決して手放しで幸せを感じる物語ではない。どちらかと言えば、苦々しい物語だと言えるだろう。しかしながら、やはりそこはクリスマス。本作には、しっかりとクリスマスの魔法が効いている。

本作には、およそ3つのストーリーが混在している。1つ目は病床の母を抱えた、バツイチ独身のキャリアウーマンのストーリー。2つ目は、結婚を間近に控えているカップルであるにもかかわらず、彼女の行動に激しく嫉妬する男と、そんな彼に辟易している女を描いたストーリー。3つ目は、少年時代に病院で迎えたクリスマスパーティーの楽しさが忘れられない男のストーリー。3つのストーリーは、絡み合う事をしない。僅かながらの接点はあるものの、影響力は何ひとつ及ばず、各々が独自にストーリーを歩む事となる。

その各ストーリーは本当に良く出来ている。3分割による時間の制約を受ける中、しっかりとした広がりをみせ、その中で実に味わいのある深みを感じさせる。しかし、良く出来ているからこそ、わざわざ混在させなくても良いのではないか?といった気持ちも生じてくる。だが、3つのストーリーの唯一の共通点であるクリスマスが重要なポイントとなる。

誰にでも訪れるクリスマス。ならば、クリスマスの恩恵を受ける権利は誰にでも等しくあるのだろう。サンタクロースならぬクリスマスのエンジェルが運んできた奇跡。その奇跡の雫を一滴垂らせば、どんなに苦い日常でも、温かく穏やかな気持ちへと変化する。薄っぺらい私の心情を持ち出すのは恐縮だが、不思議な高揚を覚えるクリスマスには、やはり奇跡が似合うように思う。但し、その奇跡は決して幸運な偶然ではない。それは懸命に生きた人々へのプレゼントなのだろう。

出演陣の演技も本作の大きな見どころであろう。彼らの技量が豊かで、しかも力強い演技があるからこそ切なくも優しいクリスマスの物語が成立しているのだと思う。そんな中、何故かクレジットのないロビン・ウィリアムズが不思議な存在感を示している。あえてクレジットしなかった制作者側の意図は、彼の演技と役柄を考えれば、粋な演出だと納得出来るような気がする。

同じくクリスマスを舞台にして、コンセプトや複数のストーリーの混在といった共通点がある大停電の夜にと見比べるのも面白いと思う。


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