自分勝手な映画批評
ニセ札 ニセ札
2009 日本 94分
監督/木村祐一
出演/倍賞美津子 段田安則 板倉俊之 村上淳
1945(昭和20)年8月、小学校教師の佐田かげ子(倍賞美津子)は不必要となった教材類を校庭の隅で燃やしていた。

国はいつでも正しいのですか?

第2次世界大戦後まもなくの日本の山村を舞台に、ニセ札造りに奮闘する村人達を描いた作品。監督はお笑い芸人のキム兄こと木村祐一。

まるでハウ・ツー(How to)ものと勘違いするような、あくまでも当時のではあるが、紙幣の作り方を丁寧に説明するような描き方をしているのは何とも面白い。

だが、本作で押さえておかなければならないのは、戦後まもなくの日本ということだ。戦争が終わる事、戦争がない世の中は紛れもなく良い事だ。だが、昭和20年の終戦で、それまでの日本人の価値観が崩壊した事を忘れてはならない。終戦によって空虚となった日本人の心が多かれ少なかれ本作のベースとなっている。

戦争をテーマにした作品は多くあるが、本作のような敗戦による喪失感を感じさせる作品は少ないのではないかと思う。良い悪いといった類いの、あるいは、そういった次元の話ではない。ただ、ある日を境に、まるで太陽が西から昇るかのごとく、全てが真逆と言って良い程変わってしまう恐ろしさ。それは通常では考えられない、想像すら絶する感覚であり恐怖であろう。

だからといって、犯罪行為を肯定するつもりはない。情状酌量の念もない。だが、本作に描かれている背景には、戦後の日本人の苦しく痛々しい心情がある事を忘れてはならないのだと思う。

本作は美談ではない。時代に翻弄された人達の悲劇をユーモアで包んだ作品だと言えるのではないかと思う。

演技に長けた俳優陣がキャスティングされる中、インパルスの板倉俊之のひょうひょうとした演技も巧者に負けない存在感を示している。


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