自分勝手な映画批評
任侠ヘルパー 任侠ヘルパー
2012 日本 134分
監督/西谷弘
出演/草なぎ剛 安田成美 香川照之 風間俊介
コンビニで店員をしているは彦一(草なぎ剛)。そのマニュアル通り、でも無愛想な客対応に先輩店員の成次(風間俊介)はあきれていた。成次が仕事を終えようとした時、ヘルメットを被った強盗が店内に入ってきて、成次を羽交い絞めにし、刃物を突き付けた。

誰かを救うなんて、誰にも出来ないのかも知れない

ヤクザが介護施設運営に携わり、奮闘する姿を描いた作品。同名のテレビドラマの映画化。

私はテレビドラマを途中、何回か観た程度であり、事の起こりも結末も知らない。そんな私が本作を観ても大丈夫かと思ったが、まったく問題はなかった。もっとも、先にテレビドラマをしっかり観ておいた方が、本作を楽しめる事であろう。

SMAPが前代未聞の国民的なアイドルグループだった大きな理由として、メンバーそれぞれに稀有なスター性があった事が挙げられる。事実、メンバー一人ひとりが映画やテレビドラマで主役を何本も演じているし、その映画、ドラマは大いに話題になり、ヒットもしている。中には、社会現象を巻き起こす程の作品もあった。

但し、メンバー全員が同時にスターになった訳ではない。まず、木村拓哉が口火を切り、他のメンバーが後に続いた。そして、最後発となったのが、草なぎ剛だった。SMAPのメンバーの中で一番最後に連続テレビドラマの主演に辿り着いたのが草なぎであり、そのドラマのタイトルは「いいひと。」だった。

仮に「いいひと。」をスター俳優、草なぎの出発点とするのであれば、いい人とは対極にあると言っても良いヤクザを演じた「任侠ヘルパー」は、ある意味、到達点だと言えるだろう。その間のキャリアを知っているので、草なぎがヤクザを演じても驚く事はなく、むしろ期待してしまう。

ただ、ヤクザ映画の第一人者、高倉健は自身が出演したテレビ番組で、草なぎがヤクザを演じる事に否定的な発言をしている。もっとも、その場には草なぎもいた。そして、高倉と草なぎは「あなたへ」で共演しており、プライベートでも交流があったようなので、その発言はテレビ用のリップサービスだったのかも知れない。

堅気になると決意をし、コンビニ店員として働いていた彦一。そこにコンビニ強盗が現れる。だが、彦一は慌てる事なく、コンビニ強盗を退治。しかし、コンビニ強盗が老人だと知った彦一は、コンビニ強盗に金を渡して、逃がしてしまう。しかも、彦一は事件後の現場に来た刑事の嫌味な言葉に腹を立て、暴力を振るい、服役する事になってしまった。服役中の刑務所で、彦一は逃がしたコンビニ強盗の老人、蔦井と再会する。蔦井は世話になった礼だとして、自分と関わりがある組織、極鵬会を彦一に紹介する。蔦井は獄中で死去。彦一が出所すると、コンビニで彦一と一緒に働き、蔦井がコンビニ強盗に押し入った時に一緒にいた成次が出迎えに来ていた。そして、もう1人、蔦井の娘、葉子も出迎えに来ていた。葉子は蔦井から彦一に世話になっていた事を聞いていたと言う。しかし、出迎えに来たにもかかわらず、葉子の態度は素っ気なかった。

荒唐無稽な作品にも思えるのだが、まじめに向き合ってみれば、色々と考えさせられる作品となっている。と言うのは、超高齢化社会の現代日本が抱える大きな問題、高齢者の介護が本作に描かれているからである。

もっとも、高齢者の介護を扱った作品は本作に限った事ではないし、それどころか、現実の社会問題としてテレビや新聞等で常日頃から取り上げられている。そして、すでに直面している人も数多くいる。ただ、この問題は、いくらでも提起されるべき問題であると思うので、その点においてだけでも、本作の価値はあると思う。

本作のユニークなところは、高齢者の介護の問題とヤクザの世界を絡めている点だ。ただ、これは実のところ、すごく理に適っている。何故なら、人の弱みにつけ込むのがヤクザであり、弱きを助け、強きをくじくのが任侠だからである。従って、高齢者の介護の問題の一応の始まりから終わりまでをヤクザの世界を通じて描けるのだ。つまり、高齢者の介護の問題はヤクザ映画にとって都合の良いテーマだとも言えるのである。

ただ、そうなると多くの人が悩み、苦しんでいる深刻な問題を娯楽のネタにするとは不謹慎だという意見もある事だろう。実際、残念な事に人の生死を軽んじていると受け取れるような、お涙頂戴な作品が多々あるので、そういった批判があっても不思議ではない。しかし、本作は任侠道と現実との間に置かれた男の姿を描いているので、高齢者の介護の問題を、お涙頂戴のアイテムにしている訳ではない。なので、不謹慎だという事にはならない筈だ。

そして、任侠とは、ヤクザだけが掲げるスピリッツではない筈だ。強きをくじくかはさて置き、弱きを助けるというのは子供の頃に、親や学校の先生等の大人から大事な事だと教えられていると思う。その、人としてプリンシプルが1人のヤクザを介して本作では描かれているのであって、理想主義的なのかも知れないが、共感に値すると思うし、少なくとも、ちょっとしたヒントとして受け入れられる面は大いにあると思う。

主人公の彦一を草なぎが熱演している。さすがに高倉程の貫禄は本作からは感じられないが、切れ味は鋭く、悲哀に関しては草なぎならではの味だと感じる。

ヒロインを演じる安田成美も非常に良い。従来の可憐さは十二分に保ちつつ、年齢相応のリアリティーを醸し出す演技は実に見事。今後もヒロインを演じる安田を観たいと強く感じた。


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