自分勝手な映画批評
真幸くあらば 真幸くあらば
2010 日本 92分
監督/御徒町凧
出演/尾野真千子 久保田将至 ミッキー・カーチス 山中聡
ある暑い日、物取り目的で民家に侵入した南木野(久保田将至)は、その民家にいた密会中のカップルに出会した。咄嗟に南木野は、その場にあった包丁で男を刺殺し、次に女をタオルで絞殺した。

感情より先に言葉が溢れてくるから

原作は小嵐九八郎の小説。強盗殺人を犯した死刑囚と彼に面会に来る女性との交流を描いた作品。作品タイトルの「真幸(まさき)くあらば」とは、万葉集の中にある有間皇子が詠んだされる歌の一節。

かなりショッキングな問題作だと言えるだろう。デリケートな部分に踏み込み、タブーを侵したとさえ思える本作。賛否はかなり分かれる作品ではないかと思う。

遊ぶ金欲しさに強盗殺人を犯した南木野は裁判で死刑を宣告される。だが、死刑制度に反対する南木野の弁護を担当する野口弁護士は控訴する気が満々だ。南木野には聖書を差し入れた教誨師がいたのだが、その教誨師の紹介により、ある女性が面会を通じて南木野の身の回りの世話をする事となった。その女性、川原薫は、実は事件に関わりのある人物だった。

本作の芯は極めて美しい物語である。魂のぶつかり合いだけで展開される物語は、決して整ったカタチではないのかも知れないが、掛け値も混じり気もなく至極純粋である。それ故に儚く、壊れやすく、切なくもあるのだが、その事で更に美しさが強調されているように思う。

但し、である。如何せん死刑囚を用いたシチュエーションには問題を感じる。確かに、このようなシチュエーションでなければ描けない所に辿り着いているので価値は見出せる。だが、それと引き換えにした代償は莫大であり、すべてを御破算にしてしまう可能性も高い。このシチュエーションは是が非でも必要だったのか? 他のシチュエーションを用いる事は出来なかったのか? 非常に大きな疑問が禁じ得ない。

本作を究極の美と取るのか、はたまた愚の骨頂だと取るのかは観る人次第。ただ、その間での危うさは本作の持ち味であるだろう。また、その間で良くも悪くも絶大な熱量を発している事も間違いないだろう。

物語の解釈は抜きにして、作品自体の完成度は高い。繊細な演出、尾野真千子や久保田将至をはじめとする出演者の抑えた演技は、どれを取っても素晴らしい。


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