自分勝手な映画批評
道
1954 イタリア 104分
監督/フェデリコ・フェリーニ
出演/アンソニー・クイン ジュリエッタ・マシーナ リチャード・ベイスハート
海辺で暮らす家族の元に旅芸人のザンパノ(アンソニー・クイン)という男が現れた。ザンパノは、この家族から引き取り、巡業の手伝いをしてもらいながら一緒に旅をしていたローザが死んでしまったので、代わりに1万リラでジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)を引き取って行った。

無用の物などない

粗暴な旅芸人と彼に引き取られた女との旅の様子を描いた作品。

「道」とは様々な意味が詰まった言葉である。ロードムービーであり、それを人生になぞらえているようであり、はたまた、ある種の悟りまで描いた本作は、決して堅苦しい訳ではないのだが、「道」を作品タイトルにしたのに相応しい、含蓄のある作品だと言えるだろう。モノクロの古い作品であるが故のウイークポイントを感じさせる面はあるにはある。だが、それ以上に深い感慨を呼び起こさせる作品だ。





貧しい家庭事情の為、旅芸人のザンパノに引き取られたジェルソミーナ。自分の本意ではなく引き取られたジェルソミーナだったが、共に旅をする程に徐々にザンパノに心を開いていく。しかし、心を開いたが為にジェルソミーナは、自分に愛情を示さず邪険に扱うザンパノに対して憤りを覚え始める。





本作で描かれているのは、ままならない人間関係の憂鬱である。そして、その不調和な関係を通じて男女の違いを浮き彫りにさせ、更にそこから発展させて、自分の存在意義の拠り所まで言及している作品である。本作の二人、ザンパノとジェルソミーナの関係が、いわゆる男女の関係と受け取って良いのか、いささか疑問ではある。だが、奇妙な関係であっても男女の違いが如実に感じられるのは興味深いところである。

イタリア人男性は皆が女性に優しいのかと私は思い込んでいたのだが、どうやらそうではないようだ。ザンパノは、何もかも自分本位な男。但し、あれやこれやと計算高い訳ではなく、奔放で子供がそのまま大人になったような男である。それはそれでタチが悪いのだが、どこか憎めないところがある。

対するジェルソミーナも大人の姿をした子供である。しかし、ザンパノとは違い、純真無垢を絵に描いたような汚れなき人物だ。それは美しくある反面、ひどく傷つき易い。だからこそ深みにはまって行く。

ザンパノとジェルソミーナ、どちらか一方だけでも違ったキャラクターであったならば、話の方向性は変わっていたのかも知れない。しかし、どちらも大人になれない子供であるが故に、残酷な様相に物語は彩られてしまう。

ジェルソミーナを演じたジュリエッタ・マシーナが素晴らしい。演じた役柄も大きく関係しているのだが、その演技はチャップリンを彷佛とさせる。愛くるしさと切なさを両立させたマシーナの演技は眩しく輝いている。


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