自分勝手な映画批評
恋におちたシェイクスピア 恋におちたシェイクスピア
1998 アメリカ/イギリス 137分
監督/ジョン・マッデン
出演/グウィネス・パルトロー ジョセフ・ファインズ コリン・ファース
1593年のロンドン。ローズ座を経営するヘンズロー(ジェフリー・ラッシュ)は拷問を受けながら借金の返済を迫られていた。

芝居は真実の愛を語れますか?

無知な私でもシェイクスピアの名前ぐらいは知っている。だが、彼の作品については恥ずかしながらあまり触れた事がない。

率直に言って本作は、シェイクスピア作品に精通している人の方が、より楽しめる作品なのかも知れない。しかし、少しの混雑はあるのかも知れないが、決して気難しい訳でも取っ付きにくい訳でもなく、私と同じような素人の方でも存分に楽しめる作品なのではないかと思う。

舞台は16世紀末のロンドン。スランプで思うように筆が進まないウィリアム・シェイクスピアは、まだ脚本が完成していない新作のオーディションでトマス・ケントと名乗る男の演技に感銘を受ける。しかし、トマスはシェイクスピアの顔を見るなり、その場から逃げ出してしまう。トマスを追ってシェイクスピアが辿り着いたのは、立派なデ・レセップス邸。トマスは、男に変装した演劇好きなその家の娘ヴァイオラであった。

困難が愛を育むのは、ラブストーリーのひとつの定石であるだろう。本作も、その基本に則っており、様々な要素が愛の成就の邪魔をする。

名家の子女ヴァイオラと才能豊かな劇作家シェイクスピアの恋。身分が違う間柄である事も障害ではあるのだろうが、さらに悪い事にヴァイオラは政略結婚を間近に控えており、シェイクスピアは別居を長い間しているのだが妻子がある身であった。また、芝居を淫らなものだとする当時の思想と、現代では考えられないのだが、女性が演劇の舞台に上がる事が禁じられていた当時の世情が恋する二人の関係に大きな影響を及ぼす。

複雑な設定ではあるのだが、ストーリー自体はオーソドックスな造りであり王道を踏み締めたラブストーリーであると言えるだろう。そこに複雑な設定が良きスパイスとなり、加えてコミカルな味付けも施されて物語を豊かにしている。そして何より、「ロミオとジュリエット」「十二夜」の誕生秘話が絡んでいる点は、観る者の心をくすぐる大きな要素になっているだろう。

グウィネス・パルトローがヒロインのヴァイオラを様々な表情を用いて体当たりで演じる。大胆で艶やかなラブシーンも大きな見ものなのだが、男装の為、つけ髭を装着したままのユニークなラブシーンは、本作でしか見られない貴重なシーンではないかと思う。

第71回アカデミー賞、作品賞・脚本賞・主演女優賞(グウィネス・パルトロー)・助演女優賞(ジュディ・デンチ)・音楽賞・美術賞・衣装デザイン賞受賞作品。


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