自分勝手な映画批評
華麗なる賭け 華麗なる賭け
1968 アメリカ 102分
監督/ノーマン・ジュイソン
出演/スティーブ・マックイーン フェイ・ダナウェイ
ホテルの一室に呼び出されたアーウィン(ジャック・ウェストン)。強いライトを当てられ、対面する人物の顔は見えず、音声も変えられている。アーウィンに求められた仕事は車の運転を1時間するだけ。報酬は5万ドルかそれ以上。とりあえず、その仕事に使うステーションワゴンを買うようにと指示され、購入資金を渡される。

危険すぎるアバンチュール

強盗団のボスである大富豪と女性保険調査員との攻防を描いた作品。

分割画面を多用し、スタイリッシュな味わいを感じさせる本作。アクション俳優スティーブ・マックイーンにとっては、ちょっとした異色作ではないかと思う。本作にアクションシーンは、ほぼ無い。しかもマックイーン演じる役柄は、莫大な富みを手にしている若き実業家であり、今で言うところのセレブ。労働階級の職人肌を感じさせる役柄が多いように思うマックイーンにとっては、少し場違いであるように感じる。

しかし、マックイーンの金色の髪と青い瞳は、捉えようによってはエレガントであると言えるだろう。しかも、本作の重要なポイントである、満たされ、退屈しきってしまった男の秘めたる野心は、マックイーンの持つ雄の本性に結び付くと言えるのではないかと思う。そして、トップに立つ男の風格もマックイーンには備わっていると言えるだろう。

マックイーン演じる大富豪のトーマスは、綿密な計画を立て銀行強盗を実行し、成功させる。手掛かりがなく、捜査に行き詰まる警察。そんな中、盗まれた現金に銀行が保険を掛けていた関係で、フェイ・ダナウェイ演じる保険会社の女性調査員ビッキーも事件を追う事になる。

アニメの「ルパン三世」は、今でこそコミカルさを前面に出した作風であるが、当初は、もう少しシリアスであった。それには、企画段階のコンセプトであった、ルパンは泥棒貴族であるという設定が大きな影響を及ぼしている。泥棒貴族とは何とも不可思議な名称であるが、要するに、生活に困って盗みを働くのではなく、盗みを快楽、もっと言えば暇つぶしの種にしている者である。

本作の主人公トーマス・クラウンも、そのような人物だと言えるだろう。盗みは彼のスリリングで優雅な趣味、満たされ過ぎてしまった退屈男の危険な道楽である。それは不謹慎極まりないのは大前提ではあるが、何とも贅沢なお遊びだと言えるだろう。

だが、そんなお遊びがまかりとおる筈はない。徐々に変化する状況。しかし、トーマス・クラウンは余裕な表情を一向に崩さない。この姿勢こそが、本作の最大の魅力である、大人な駆け引きの見応えを生み出していると言えるだろう。

ヒロインを演じるフェイ・ダナウェイの美しさも本作の見どころである。彼女とマックイーンのラブシーンは、決して直接的ではないのだが、想像力に働きかけ、実にエロティックでエキサイティングだ。


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