自分勝手な映画批評
キリング・ミー・ソフトリー キリング・ミー・ソフトリー
2002 アメリカ 100分
監督/チェン・カイコー
出演/ヘザー・グラハム ジョセフ・ファインズ
ロンドンでROMやウェブのデザインの仕事をしているアリス(ヘザー・グラハム)は恋人のジェイク(ジェイソン・ヒューズ)と一緒に暮らしている。1月のある朝、アリスは、通勤途中の横断歩道の信号の押ボタンで見知らぬ男(ジョセフ・ファインズ)と手が触れ合ってしまう。

愛しすぎて、愛されすぎて

キャリアウーマンの女性が激しい恋に落ち、それゆえ恐怖の渦に巻き込まれて行くサスペンス。通常なら一生で口にする事はないであろう言葉が作品タイトルだが、作品自体も、あらゆる意味で作品タイトルに負けない過激な内容になっている。

「ひと目合ったその日から、恋の花咲くこともある」なんて昔のバラエティー番組のキャッチフレーズがあったが、まさに本作は、そのキャッチフレーズに相応しい、理屈ではない、初見の直感からスタートする。

言葉もロクに交わさず恋に落ちる。実にロマンティックだ。しかし、本作はそうは終わらない。出逢い以降もロマンティックに感じられる面も多くはあるのだが、それ以上にエスカレートして行く行動と心理に恐ろしさを覚える。

そう思えるのも、1つは盲目な愛の恐さだろう。決して盲目な愛が悪い訳ではない。むしろ賛美される事も多いのではないかと思う。しかし、あまりにも周りが見えず、まるで隔離されたような二人だけの世界は、場合によっては危険であるだろう。その危険性を憂慮するのは、もしかすれば過度だと言えるのかも知れない。だが、その可能性を最大限に想像させ、活かしているのは本作の優れた点であろう。

もう1つポイントとなるのは、年齢だろう。本作が10代、もしくは20代前半の恋愛として描かれていたのならば、現実離れした異常者の物語になっていただろう。本作は異常者の物語に違いはないのだが、自身の経験や積み上げたキャリアの隙間とも言うべき、満たされていない部分へ入り込むような感情が、盲目な愛に至る可能性は考えられなくもない。逆に、もう少し年齢が上であるならば、迷いも生まれ、一目散に愛欲には走らないのかも知れない。この辺りのさじ加減も絶妙である。

物語はトントン拍子で進んで行く。そのスピードは観ている者を不安へと誘って行く。性的にも過激な描写は、その不安を一層高めるだろう。そして、イギリス、ロンドンの曇りがちな天候も、その感情を助長する。

さらには、本作にはミステリーの面も合わせ持つ。観終わった後に振り返った際、納得出来るのは、良質なミステリーである証しであろう。

本作はヘザー・グラハムが主演である事が不可欠だ。オシャレな服装で、まるでお人形さんのような容姿は実に可愛らしい。そんな彼女が臆する事なく大胆なシーンも演じる。これを単にギャップとしてだけではなく、美しきキャリアウーマンの等身大の赤裸々な姿として解釈出来る。チャーミングな魅力たっぷりなヘザー・グラハムが演じるからこそ、湿っぽい官能サスペンスで終わらないのだと感じる。

ジョセフ・ファインズの演技も素晴らしく、彼の不気味にさえ感じる存在感が物語を最後までリードして行く。


>>HOME
>>閉じる



★前田有一の超映画批評★

おすすめ映画情報-シネマメモ